SOLVE A RIDDLE〜双子の勇者たち〜

+マーザヌー+

天、地、妖、魔、
どの界もくだらない。

人々は、平和にしたいと言いながら、いつ争いが起きるか楽しみで仕方ないのだ。
平和を主張するのであれば、呪術を使える者を抹殺せよ。
武器を全て破壊せよ。
はみ出す者は始末せよ。

他人とは何か。
何を守って平和と言うか。
個性あっての人であらば、殺戮も全て受け容れよ。
それこそが真の平和。

なのに………
「平和とは一体なんなのだ?どうして俺様が牢へ入れられるのだ!?」
マーザヌーは手枷足枷を引きずりながら、牢へぶち込まれた。
多くの犠牲を出す戦いの末、王であるファジィ直々の手により漸くマーザヌー捕獲に成功した。
マーザヌーの呪術を封印すべく、ファジィに仕える神官が手枷をした。
「これで呪術は使えまい。理由はじっくり牢で考えるが良い」


マーザヌーは、天界に拘束された犯罪者だった。
平和を象徴とする、天の界を酷く嫌っていた。
この男、年の功は人間界で言う二十代後半。
痩せては無く、また、ガッシリとした体格でも無かった。
電光を操り、様々な悪人を殺してきた。
それが正義。
輪を乱す者、物を盗る者、悪態を吐く者、どれも彼から見れば平和を乱す民だった。
平和と言いながら、神は呪術を封印しなかった。
平和を主張しながら、どんな悪人でも許す、そんな国が大嫌いだった。


ある日の事。
マーザヌーは己の正義故に牢を破る事を決意した。
天の界は腐っている。
魔界へ行き、自由を認められる国を作ろう。

天界は平和。
地界は人権。
妖精界は保護。
魔界は自由。
と、それぞれの国には象徴があった。

ここは平和じゃない!
俺様はもっと認められるべきだ。
認められるには、魔界の方が都合がいい。
幸いにも王は子供。
上手く転がり込めば、国さえも手に入る。
そして、真実の自由を手に入れ、国を治めよう。

マーザヌーは電光呪術を使った。
古ぼけた牢の壁は、簡単に壊れた。
マーザヌーの呪術能力は、民にしては充分すぎる程強かった。

壁を突破し、牢から城、城から界を抜けた。
手にはまだ、呪術を封印する手枷が嵌められている。
「これで自由だ!!しかし、これを何とかしないとな………」
空の上で歓びを噛みしめた時、背後から強い気力を感じた。
「お前に自由は無い」
振り返ると、真っ白く大きな羽。
身長以上の長く大きな杖を持った男が、数十人の神官と、さらに十余人の兵と共に姿を現した。
「お前は………ファジィ!」
「マーザヌー、お前には死の刑が降りたのだよ」
「死刑?まさか」
狼狽するマーザヌーを、容赦なく死の言葉で責め立てる。
「何人、罪のない民を殺した?それは数え切れない程だろう。お前程戦力を持つ者ならば、もっと幸せに暮らせただろうに。死の刑だ。勿体ない」
本心は分からないが、残念そうに首を振った。
「嘘だ。俺様は、正義を貫き通しただけだ。腐った心を叩きのめしただけだ!」
「どんなヤツだって殺してはならない」
「よく言うぜ、お前は俺様を殺しに来たクセに!俺様が殺した奴らと俺様は生きる意味が違う。命の価値が違う!俺様が死の刑に選ばれるいわれは無い!!」
「………だから死の刑なんだよ。あーあ分かってないね」
ファジィはゆっくりと杖を振り下ろした。
それはまるで、死の神が鎌を降ろすかの様に。
「くそっ!」
マーザヌーは構えた。
天界の王直々に連れ戻しに来ただと?
つまり嘘では無い。
後がないということだ。
ここで殺される事になるだろう。
正直、十人の兵など恐くない。
力量は充分に俺様の方が上だ。
「皆の者、掛かれ!」
神官の合図と共に、十余人の兵が一斉に襲いかかる。
マーザヌーは器用に枷の掛かった両手を遣い、兵士を一人、また一人と殴っていく。
一人の神官が術を唱える。
マーザヌーはその術に向かって両手を突き出した。
両手に掛かった枷は、その術によって見事に解除された。
「なんと!?」
いや、よく見ると、マーザヌーの手首から先は無くなっていた。
しかし、直ぐに再生する。
「………どういう事だ」
「こんな事もあろうかと思い、魔術の儀式をしておいた。俺の体は何人たりとも傷つけることは出来ない」
「………」
兵達は恐怖で体が竦み上がった。
マーザヌーは真空の術で兵の首を次々に切り落とす。
「うわあああっ!」
「貴様………」
ファジィは怒りを覚えた。
しかし為す術はない。
「これで終わりだファジイ、天国で仲良く暮らしなっ!」
マーザヌーはファジィに向かって何かを投げつけた。
「ぐはっ!」
焼け付くような痛みが腹部を襲う。
「どうだ?英雄の剣の味は?」
「………マーザヌー………」
腹に左手をやると、棒のような物に触った。
体を貫く、その柄から、赤い物がしたたり落ちる。
「くっ………」
これは、クミコが生み出したグロルフの剣。
ファジィは空に浮いていられるのがやっとだった。
そのままバランスを失い、落下した。


+++


「あったあった」
プレーノは、父の墓から、一振りの杖を取り出した。
「これが噂に聞く、フーテルさんの杖ですね」
「ああ。あいつ、グロールは俺にこの杖が使いこなせると太鼓判を押してくれた」
「はい。私もそう思います」
「マジで?マリネにも言われたら、もうマジで腹くくるしかねーな」
「この杖は名前がありませんわね」
「あ、そっか。親父の名前を呼び捨てにするのも気が引けるし………」
プレーノは少し考えて頷いた。
「ありきたりだけど、魔力の杖にする」
「魔力の?確かにありきたりですね」
「グロールの太鼓判付きだし、あいつ魔族だから」
「クスクス。なるほど」

二人はそう言って、フーテルの墓を後にした。

これから起こる地獄を知るはずも無かった。



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