SOLVE A RIDDLE〜双子の勇者たち〜

+パストル+

「秋ちゃん!」
背後から呼び止められ、秋風は振り返った。
「プレーノ、大丈夫なの?」
「くっくっく」
一緒にいたグロールに笑われながらも、プレーノは平然を装った。
「何とかね。マリネの様子も気になるし」
「無理しない方がいいよ?」
「そうも言ってらんねぇって」
「くっくっく」
「ぐおらー。いつまでも笑って、うるせーんだよっ!!」
「すまない。くっくっく」
グロールは胸ぐらを掴まれながらもクスクスと笑い続けた。
それはプレーノが可笑しかったからではなく、もっと別の意味が込められた笑いだったのだ。


+++


「ちょっと待てよ。俺の話はまだ終わってねぇ」
あの島で力を合わせて魔物と戦った後、プレーノはグロールを引き留めた。
グロールはやれやれとため息を付き、剣を地面に刺す。
秋風の事をはぐらかし続けるグロールを、彼は許せないのだ。
「丁度良かった。俺もお前に話がある」
グロールはそう言って、プレーノに向かって剣を構える。
「………!」
プレーノは剣先に半ば怯えながら杖を構えた。
「っんだよ、ヤルってのか?」
その構え。
いつも気になっていた。
「誰に教わった?その構え」
「誰にも習ってねーけど。何か変か?」
「それ、杖の構えじゃないよな?」
「は?」
グロールが剣で杖を指し示す。
プレーノは自分の構えを崩さないように何とか客観的に自分の姿を捉えようとする。
その瞬間、グロールは足下の小石をいくつか拾ってプレーノへぶつけてみた。
「うわっ!」
バラバラと音が鳴り、プレーノの周りに霧が出来た。
小石が砕けて霧状になったのだ。
「ほら、その捌き」
「びっくりしたー!何だよ?さっきから」
杖の構え、そして俊敏さ、技の出し方。
間違いない。どれを取っても"あいつ"に似ている!!
グロールはニヤリと笑った。
「何だよ一体!?」
「いや」
剣を地面に突き刺し、手袋を脱いだ。
汗でベトベトだ。
「お前のその杖は、どこで手に入れた?」
「これ?これは〜確かシャロット城の武器屋で揃えてもらったっけかな?」
「成る程。どうりで」
「は?」
「お前にその杖は似合わねぇ」
「るせー。どうせお前みたいな化け物並みの腕力なんか持ち合わせちゃーいねーよ」
グロールはふふっと笑った。
「逆だ。親父さんの杖はどうした?」
「親父の杖?墓に眠ってると思う」
「親父さんの杖は魔力が込められている」
「ああ。知ってるよ。だから墓に封印してある。あの杖は恐ろしい威力を持ってるって話だかからな」
「そこまで知っていて、使わねぇのは何故だ?」
「俺に使いこなせる訳ねーだろっっ。力が足りないと喰われるんだぜ?」
「さてな」
グロールはスペアの手袋をはめ直して、手を動かしてみた。
「今からお前を殺す」
「はあ?」
「これはお前の親父さんの杖を持てるかどうかのテストにもなる」
「俺が死ねば持てるって事かよ?そりゃー魔力だもんな?しかし死んでどうやって戦えばいいんだ?」
「ぷっくく」
今日は珍しく良く笑うグロールに、プレーノはポカーンと口を開けて見つめた。
「生き延びることが出来れば杖を持てるって事だよ。死ねばそれまで」
「………ははは。冗談キツイぜ。無理に決まってるだろ。大体、秋ちゃんに情けない格好見せたままで死ねねーっつーの」
「やるのかやらないのか?」
グロールの目つきが急に変わった。
「マジかよ………」
プレーノは黙り込む。
このままではさっきのように足手まといになる事も確か。
「今決めろって酷だな、ははは。今死ねって言われてるようなもんだ」
「自信がないならやめておいた方が良い。俺もファジィに殺されるのはごめんだからな」
「ははは、流石のお前も妹には敵わん?」
「ファジィは俺を敵視しているからな。俺が成すこと全て否定してくるだろう。それに、お前を巻き込みたくないと思っている」
「俺を?まさか。もうここまで来てそれはないだろう?」
「考えてみろよ。今のメンツで普通の人間はお前だけ。ローズやサンクスも早々に身を引いたぐらいだ。今後は秋風だってお前に普通の人間として接してくるだろうな」
「テストを受けなければ、秋ちゃんやフレノールに心配され、受けて………でも、俺がもし死んだら………」
「秋風の事は心配すんな。俺に任せておけ」
「それって………」
プレーノは言いかけてやめた。
秋風の事を想っているという事か。
「はっ、冗談!それだけは譲れねぇ」
プレーノは杖を構えた。
受けて立つという意味か。
グロールは嬉しそうに顔を歪めた。
「不本意でもお前を信じるしかない。死んだらお前のために謝ってやるよ」
「それはごめんだな」
二人は暫く睨み合った。
やがてプレーノの決心も固まる。
「その杖は何の役にも立たんぞ。幻魔斬!!」
「わわっ………っ!!」
グロールは魔力を込めた剣を振り下ろした。

プレーノが耐えられるか………?

そんなの決まっている。

当然耐えられない。

それは分かっている。
大事なのは、この一刀を受けるかどうかの判断を即決したこと。
それなりの度量があった。
間違いない。

"あいつ"の生まれ変わりだ。

プレーノの体がスローモーションを見ているように、ゆっくりと地面へ倒れていった。
グロールは剣を放り投げ、彼の元へ駆けつけた。







「パレオ………お帰り」

血を流し、気を失っているプレーノを強く抱きしめ、そう呟いた。




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