SOLVE A RIDDLE〜双子の勇者たち〜

+グロール+

フレノールのテレポで地界の塔へ到着した途端、
ドドーン!
突然凄まじい爆発音が鳴り響いた。
「あの島か!」
「ビーク!?」
全員が一斉に振り返る。
遠すぎて、ここからじゃ良く分からない。
「と、とにかくマリネは塔へ入るんだ」
プレーノがマリネの背中を押した。
「でも………」
「大丈夫。マリネは心配するな。秋男はここで塔を守れ」
マリネと秋男は顔を見合わせ、頷き合った。
「皆さん、ご無事で!」
マリネはそう言って塔へ消えた。
「バリアが消えたからなのかな?兄貴、どうしよう?」
「………」
プレーノは硬直してしまい、何も答えない。
「実戦経験ゼロに等しいからな」
グロールはそう言って、プレーノの背中を叩いた。
「おい、固まってる場合じゃないぞ。恐いのか?」
「馬鹿言え、恐い訳ないだろ!!」
グロールは、いつもの調子に戻ったプレーノに笑いかける。
「リーダー、これはあくまでも、ていあん、だが。………あの島へ戻ろう」
「戻る!?それは駄目だ」
「だけど、ここにいたら、秋男の身が危険だ。それに魔物は何処へ行くか分からない。故郷を焼かれたくないだろう?俺達で引きつけるんだ」
「あ、そうか、そうかもな…。……でも、秋ちゃんは………」
「秋風も残れ。フレノールも」
「俺とお前で行くのか!?」
「嫌なら一人で行く」
「それなら私が行く」
「秋ちゃんが!?」
一歩前に出た秋風を目の当たりにしたプレーノは両手をあげた。
「あ〜もう!分かった!フレノールと秋ちゃんは秋男と一緒に残れ。行こう、グロール」
「よし、飛んで行くから掴まれ」
プレーノはグロールの体にしがみついた。
「………ホモ、じゃないよな?」
グロールの胸に顔を埋めるプレーノの姿は、まるで彼氏にしがみついた彼女の様。
「あ?あ、当たり前だろっ!誰がお前なんか」
「じゃぁ、しがみつくのは腕に」
「あ、ああ、分かった」
体から腕へと変更させ………。
途端にふわりと二人の体が宙へ浮いた。
「わわわわわ、ぎゃあ〜〜っ!!」
プレーノは再びグロールの体へしがみつく。
「大丈夫?プレーノ」
秋風が心配するのを見て、俄然、キリッとした表情を見せる。
「大丈夫!」
親指を立てるそのポーズは褒めたいぐらい格好良い。
しかし………
「そーっとな、そーっと行けよ」
「分かったよ」
グロールはそう言いながら急ピッチで島へと飛び上がった。
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」
二人の姿は見えなくなり、プレーノの悲鳴も聞こえなくなった。
「ふぅ〜。兄貴のヤツ、恐がりだな〜もう」
秋風とクスクス笑い、秋男と三人で塔の番をした。

「おい、大丈夫なんだろうな?」
「何が?」
「これだよ、これ。落ちたりしない?」
「よっぽど俺に信用が無いんだな」
そう言ってやれやれと笑う。
「見ろよ、霧が広がってるぜ?」
「げーなんだよ、あれ!」
バリアが解けたばかりの洞穴の周りには、紫色の霧が渦を巻いていた。
「降りるぞ」
地上から三メートルくらい上空で、グロールはプレーノを突き放した。
「わわっ!!」
しかし、体は落ちない。
「え?あれ?」
「多少なら離れてても大丈夫なんだよ」
「先に言えよ!!秋ちゃんの前で要らぬ恥かいたじゃねーか」
「果たしてそうなのかな?」
グロールはクールに笑うと、二人の体を着地させた。
「いつも涼しい顔しやがって」
「周りを見ろ」
グロールは剣を抜いた。
プレーノは辺りを見渡す。
霧が濃くなり、辺りの木々が枯れてゆく。
「………へへへっ」
プレーノは腕をポキポキと鳴らし、軽く準備体操をした。
二人は背中合わせに立つ。
「そんなに長く居られないな」
「同感!」
二人は同時に飛び上がった。
途端に魔物の群れ。
飛び退きながら、プレーノは杖を軽く振った。
せいぜい魔物を追い払う程度で、なかなか倒せない。
「こいつら見た事有るか?」
襲いかかる魔物をなぎ払いながら、プレーノは訊ねる。
「ないね」
プレーノと違い、グロールの剣捌きは見事なもので、次々と魔物を斬り捨てる。
「お前が何年生きてるか知らねーが、見たこと無いって妙だよな。っと、フリージング!」
杖の先が光り、魔物目掛けて飛び込んでいく。
ギャーー!!
悲鳴を上げて倒れた。
「やっと四匹かよ。どうした?息が上がってるぞ?」
プレーノに襲いかかる魔物二匹を、グロールはたった一太刀で倒す。
「お前、やっぱり死ぬ気だろ?最近秋ちゃんに冷たいのはそのせいか?」
杖から出る気体を魔物にぶつけながら、プレーノはグロールに話しかける。
「カレナの為?それともビークの為か?」
「黙って戦えよ」
「黙ってられっかよ。そんな事したって誰も喜ばねーぞ?」
「生きてても喜んだりしないだろ、フツー」
「屁理屈!………ひっ!」
勢い任せに振りまわした杖は、見事に空振ったが、グロールの援護で助かった。
「女よりもビークが大事か?お前こそホモじゃねーの?」
グロールは人間とは思えない高さまで跳躍し、魔物を切り倒した。
空中でバク転をして着地する。
「何とでも言やーいい。秋風の事も、俺を理由に手を出せねーっつーなら、俺は降りてやるよ」
「お前そんな言い方無いだろう!それに秋ちゃんの事はマジじゃなかったのかよ!?」
「おい、ちょっと待て。後ろ後ろ」
グロールはプレーノの背後を剣先で指した。
洞穴の周りに再びバリアが張られていく。
「………あれ?」
魔物の姿がパッタリと無くなり、辺りはシンと静まりかえった。
「一体どういう事だ?」
二人は顔を見合わせ、首を傾げた。
「とにかく命拾いしたようだな」
ハッと気づいたプレーノは再び振り返る。
「ちょっと待てよ。俺の話はまだ終わってねぇ」
グロールはやれやれとため息を付き、剣を地面に刺した。
「丁度良かった。俺もお前に話がある」
グロールはそう言って、プレーノに向かって剣を構えた。


***


澄んだ空が眩しい青に染まる。
オレンジ色の太陽が眩しく彼の顔を照りつけた。
茶褐色に焼けた肌。
少しヒリヒリと痛む腕をさすりながら、必死で愛しき人を捜し求める。
「パストル………助け、て」
泣きながら助けを求めるが、周りには誰もいない。
左手には、もう一人の愛しき友を連れ、二人は命からがら助けを求めていた。
「カレナ、泣くな!」
カレナは何度も頷きながら、それでもパストルを呼びながら、空を飛んでいた。
カレアは少しでも長く生き延びられるように、隠れる場所を探していた。
"なるべく長く生きて、もう一度パストルに会うんだ"
カレナの手を強く握る。
目指すは地の世界。
地の神であるクミコの生地へ!

「あそこ!クミコが居る!」
クミコが三人の部下に守られ、宮殿へ入っていくのが小さく見えた。
ふと空が曇る。
「見つかった!」
カレアはカレナを背中に庇い、構えた。
「ダメだよ、カレア!逃げようよ!」
「無理だ!あいつからはもう逃げられないよ」
カレアはカレナの手をもう一度強く握りしめた。
「守るよ。パストルに代わって、カレナを守るから!」
次の瞬間、落雷が二人を襲った。
しかし、咄嗟にカレアが生み出したバリアのお陰で、二人は落雷にあわずに済んだ。
「ほう。さすが、神の子には通用せぬか」
二人の目の前に現れたそれは、人の姿をした化け物と呼ばれる者だった。
「魔界だったか。上層部の居ない宮殿は、実につまらないオモチャだったよ」
カレナの頭に血が上る。
「まさか………」
「魔界は滅んだよ。一瞬の落雷で、大勢の兵が………くくく、あははは!」
カレアとカレナの顔が、今度は血の気を失い青くなる。
しかしカレナの顔を見て、カレアは気を取り直した。
「カレナ、大丈夫。ヤツは上層部が居ないと言った。パストルは多分、無事だ」
カレナは顔面蒼白のまま、人形の様に頷いた。
「さっきの落雷程度では効かんな。これではどうかな?」
両手を上げ、再び雷を呼び起こす。
カレアはカレナを庇い、抱きしめた。
バリアを発し、呪術を高める。
「かかったな!」
ヤツはニヤリと笑い、剣を二人へ放り投げた。
剣は、カレアの背中を貫通し、カレナの背中まで突き抜けた。
「カレ………ナ」
目の端で、こちらに気づいたクミコが、両手を突き出しているのが見えた。
守っていた三人の英雄が悔しそうにこちらを見ているのが見えた。
"あぁ、死ぬんだ。カレナと一緒に………パストルに、会わせたかった。会いたかった"
二人は天からどこまでも堕ちて行った。

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