SOLVE A RIDDLE〜双子の勇者たち〜

+グロール+

秋男が戻ってきて、みんなが出迎えた。
グロールは城の番兵にローズ達を呼んでくるように指示した。
「お兄ちゃん!!」
真っ先に秋風が秋男に抱きつき、会いたかったと漏らした。
「僕もだよ。秋風、そしてカレア。会いたかった」
「うん。うん」
秋男は三日ぶりに会った妹を抱きしめ、頭をポンポンと軽く叩いた。
「なんか二人、兄妹の癖にヤラシイぞ?」
プレーノがニヤニヤして茶々を入れた。
「お兄ちゃん、ビークの事で………」
「うん、その事を今から話そう。早速だけど、みんな集まってくれる?」
「お兄ちゃんは丸三日も塔の中にいて、体は大丈夫なの?」
「うん、少し休んだから大丈夫。それよりも一刻も早くみんなと決めたいことがあるんだ」
秋男は会議室へ向かった。
秋男から離れた秋風の目に、グロールの姿が入った。
目が合い、立ち止まる。
「ただいま」
「………」
秋風は何も言わず、会議室へ入った。

秋男達が会議室に集まると、 暫くしてローズとサンクスが入ってきた。
「秋男さん、もう宜しいんですの?」
「はい。実はあまりゆっくり休んでいられないんです」
「まぁ」
ローズ達も席に着いた。
「まずは記憶の糸を繋げておきたいんだ。フレノールと秋風が塔で見た記憶を教えて欲しい」
「記憶と言っても………」
フレノールが考え込む。
「じゃぁ、ビークの事で何か」
「ビークの事、そうね………パストルと仲が良くて、魔界の宮殿敷地内に秘密基地なんか作ってたでしょ。それを見つけたとき、私もの凄く怒ったと思うんだよね。ビークに」
「それ以外は?」
尋ねられ、フレノールは首を左右に振った。
「そうなんだ………手がかりはなさそうだね」
秋男はグロールと頷き合った。
「じゃぁ、秋風の記憶は?」
「うん、お兄ちゃんも思い出したと思うんだけど、ビークって生きてるの?死んでるの?」
「ビークって、あのビークの事?生きてるんじゃねーのか?あの戦いで死んだとは思えねぇ」
プレーノが答えた。
「ううん、私の記憶では、ビークは死んでる事になっているの。お兄ちゃん、何か知ってる?」
「死んでるって………??」
「うん、その事なんだけど、僕の記憶にも、ビークが死んだ事になってるんだ」
「なんじゃそれ!?」
秋男と秋風は、前世の思い出した記憶を皆に話して聞かせた。
「それじゃぁ、今のあいつは何者なんだ?」
「それは分からない」
「分からないって、そんないい加減な返事は………」
プレーノの問いを、グロールが制した。
「今は、あいつが誰かじゃなくて、コルネを助ける事が先決じゃないのか?」
「………そうだな。でもよ?秋ちゃんがビークと仲が良かったって聞いたら、なんだか戦いにくくないか?そこん所、秋男はどう考えてるんだよ?まぁ、実際にお前は命を狙われてるんだし。秋ちゃんも狙われたし、コルネさんも捕まったまま。いずれにせよ戦う事になるとは思うけど………」
「僕が覚醒した途端、襲われた」
「何だって!?」
「得体の知れぬ、見た事の無い魔物が襲いかかってきた」
グロールが付け加えた。
「おい、冗談はやめろよ、お前が魔界で何年生きてっか知らねぇけど、その間一度も見た事無いって一体………」
「居所が割れてる可能性がある。ビークの仕業だと思う」
秋風の顔は青くなった。
「そんな………!」
「カレナは用済みってか?友達だったのに?」
「それは本人に聞いてみないと分からない事だが………」
そう言ったグロールの後に、秋男は続けた。
「どうやら本気でビークと戦わないといけないらしい」
「お兄ちゃん、私、ビークと戦う自信無いよ………」
「命を賭けろ、そうで無ければやられるだけだ」
グロールがそう言うと、プレーノは、秋男とグロールを交互に見た。
「おいおいおいおい。お前、急にお喋りになったと思ったら、突拍子の無い事を言うんだな?」
そして立ち上がる。
「グロール!さっきの秋ちゃんの話を聞いて無かったのか!?ビークは秋男と秋ちゃんの前世の友達で、コルネさんの双子の育ての親の実の弟!そんな奴相手に命を賭けた戦いなんて出来ないだろ、普通!」
「初めから命を賭けない戦いなんてないだろ」
「だけど!!………普通の人間ならそんな事出来る訳ねーだろってんだよ!?」
プレーノが机を叩いた。
しかしグロールは動じない。
いや、手に作った拳を握りしめ、堪えているのだ。
「秋男も正気かよ?こいつにそそのかされたんじゃねぇの!?」
怒鳴るプレーノを宥めるように、フレノールが割って入った。
「秋男君、秋男君の身に何かあればコルネさんが悲しむわ。勿論秋風やビークの身にもね。先日言ったとおり、囮を使いましょう。囮を差し出して、その隙を狙ってコルネさんを助けるのよ?とにかく今はそれだけ。そうすれば兄貴が心配する様な事態にはならずに済むでしょう?」
秋風やプレーノは首を縦に振った。
しかし、
「いや………」
秋男は首を左右に振って続けた。
「僕は、ビークと差し違えてでも、姉さんを助けるつもりだ」
「………差し違えてって、お兄ちゃん………?」
「秋男さん、コルネさんを助けるために、命まで差し出すおつもりですか?」
「場合によっては、そうなるだろうな」
「はぁっ?」
「そんな………!!駄目です!絶対駄目です!だって、秋男さんの事をずっと待ってたパストルの気持ちとか、秋男さんを庇って逃がしてくれたコルネさん達の気持ちはどうなるんですか!?秋男さんが死んだら、全て無に流れてしまいます!」
マリネが必死で訴える。
「そうよ!お兄ちゃんが死ぬ事無い!!グロール、あんなに会いたがってたカレナを死なせて良いの?それで納得出来るの?」
「ほら、てめーらの方がおかしいんだよ!」
秋風とマリネが追い風になり、プレーノは鼻を鳴らす。
「お兄ちゃん、ビークは、コル姉の弟だよ?戦っちゃ駄目だよ」
「そうよ!友達同士でそんな………秋男さん、考えましょうよ」
秋風とマリネが叫ぶ。
今の秋男の目もグロールの目も、生き生きとしていない。
マリネはふと頭に過ぎった思いを言葉にしてみた。
「グロールあなたまさか………秋男さんを庇って死ぬつもりなんじゃないでしょうね?」
秋風を始め、全員が彼を見つめる。
グロールは、全員の顔を見つめ返し………
「ははっ、まさか!」
皆の心配を余所に、グロールは失笑した。
「………!!」
しかしその笑みが、プレーノに火を付けた。
「けっ、グロールもゲンキンだな!秋ちゃんがカレナだと思ってた時は、マジで食らいついていたのに、野郎と分かった途端、手を離すんだ?」
プレーノが吐き捨てるように言った。
「ちょっと兄貴!」
「だってそうだろ!てめぇには秋ちゃんの気持ちは絶対分からねぇよ!!」
プレーノはグロールの胸ぐらを掴んだ。
グロールはそのまま立ち上がる格好になった。
「きゃぁっ!!」
秋風の悲鳴が聞こえた。
「………何とか言えよ!」
プレーノに睨みつけられ、 グロールは、彼の手を掴んでテーブルに叩きつける。
「………っ痛!」
「じゃぁ、てめーは分かるのかよ?秋男の気持ちが!!」
珍しくグロールが怒鳴ったので、辺りは静まりかえった。
いつもならはぐらかしていた。
そんな彼が、立ち上がり、怒鳴っている。
「全員頭冷やせよ。秋男は死ぬとかそういう事は一言も言ってないだろ!」
辺りを見渡し、腰を下ろした。
「あ〜そうか、成る程。結局カレナって訳か」
プレーノは痛めた手首を回した。
「………なんだと?」
「さっきのは取り消すよ。秋男がカレナだから気持ちが分かるって言いたいんだな?てめーはカレナだったら誰でも良かったんだ?とにかくカレナだけを大事に思っていればそれで!!」
「そうは言って無いだろ!」
「言って無くてもそういう意味だろ。いつもそうだった。グロールは自分からは答えを言わない。今までてめーは人からの解釈で乗り切って来たじゃねぇか!」
「………」
グロールは押し黙った。
「ほら、そうだろ。いつまでも俺らを騙し切れないんだぞ」
プレーノは鼻の穴を膨らませた。
「そこまでに致しましょう」
ローズが立ち上がった。
このメンツの中で一番小さいのに、威圧感がある。
プレーノをはじめ、皆は緊張した表情で彼女を見つめた。
「このままでは、まとまるものもまとまりません。秋男さん、日を改めてみては如何ですか?」
「でも………」
「秋男さん、この状態で戦っても、折角の作戦は失敗に終わってしまいます。本日は解散です」
ローズがそう言うと、皆は渋々席を立ち上がり、会議室から出た。
皆が出て行くのを確認し、ローズは秋男とグロールに振り返り、にっこりと微笑みかけた。
「ビークの居るらしき場所が分かりました。あなた方二人は、下見程度に赴いてみては如何ですか?」
秋男の顔が明るくなった。
「下見か!丁度いいな?グロール!?」
「そうだな」
サンクスは地図を二人に渡した。
「バリアが張ってある雰囲気でした。近づき過ぎないようにご注意下さい」
「ローズさん、ありがとう!じゃぁ、早速行こう!」
「待ってください!」
全員退室したと思っていたが、マリネが残っていた。
「秋男さん、私に気球の操縦をさせて下さい」
「二人共空を移動できるし、必要ないよ」
「でも、もし途中で疲れたら………お願いします。気球の操縦をさせて下さい」
マリネは秋男に頭を下げた。
「マリネ、でも………」
カレナに覚醒してから、やたらと魔物に襲われるようになった今、プレーノみたいにサポートしてくれる人がいない分、彼女に負担がかかる。
出来れば今回は諦めて貰いたい。
しかし………
「良いって言うまでここを動きません!」
マリネは諦める様子がない。
秋男が困っていると、グロールは秋男の肩をそっと押した。
会議室から出ようと言うのだ。
「じゃぁマリネ、動くなよっ」
グロールはそう言い、マリネの脇をすり抜けた。
秋男は心の中で謝りながら、会議室を出ようとした。
「グロール!私の言う事が聞けないの?」
背後から呼ばれ、グロールは困った顔で立ち止まり、頭を掻いた。
「あのさ………それって職権乱用って言うんじゃないの?」
「何でもいいのよ。連れて行ってくだされば!」
マリネは嬉しそうに微笑む。
「あのねーお姫様?カレナが覚醒した途端、魔物の数が増える一方。とてもじゃないけど、お姫様を守ってられる状態じゃ………」
「そう。………分かったわ、策があるの!」
マリネは少し考えて、頷いた。
皮肉っぽく言ったグロールの言葉をあっさりスルー。
「秋男さん、即出発ですか?」
「あ、準備があるならいいよ。じゃぁ準備が整い次第出発!」
秋男は横目で睨むグロールに苦笑いで応えた。


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