SOLVE A RIDDLE〜双子の勇者たち〜

+秋男+

「起きた?」
秋男が目を覚ますと、そこにはたき火をしているグロールの姿があった。
まだ暗い。
「あぁ、あのまま寝てしまったのか」
初めはボーッとしていたが、やがて思い出したのか、起きあがった。
「小一時間って所かな。元気になったんなら、城に戻ろうと思うんだが?」
「あ、ちょっと待って欲しい。思い出した事とか、パストルにちゃんと話しておきたい事があるんだ」
秋男は、グロールが用意してくれた簡単な食事を摂りながら、ぽつり、ぽつりと、カレナの記憶を告白した。
ビークの様子がおかしかった事、そのビークを殺してしまった事。
その時の気持ちなど、包み隠さず話した。
「ビークを殺した?何かの錯覚じゃないか?現に生きて、カレナの命を狙ってる」
「うん、僕も変だと思ったんだけど」
「操られている様子だって言ったよな?」
秋男は無言で頷き、グロールは過去を思い出した。
やがて、はっと顔を上げた。
「どうしたの?」
「いや、俺にも心当たりがある。それに、色々と気になることがある」
「何?」
「………俺にもまだ分からない。少し時間をくれ」
秋男は二度三度頷いた。
「………カレナとビークが失踪したあの日だな。もしかしたらそこに関係があるのかも」
二人は暫く黙り込んだが、やがて秋男が話しかける。
「国はどうなったの?」
「滅んだよ。一緒に遊んだ噴水も、壊れていた」
「じゃぁ、戦争は………?」
「本当は、とっくの昔に終わってる。平和だっただろう?今まで」
秋男は頷いた。
フレノールやローズが言ってた、神様の戦争ってやつは、本当はもう終わってたんだ………。
そうだよな、僕はもう神じゃないんだから。
「今はコルネを助けることだけを考えろ。………黙っててすまなかった。コルネの事」
「いいよ。その代わり教えて?魔界での姉さんの事」
「ん?」
「ビーク戦の前に確認しておきたいことがあるんだ。ビークの姉。コルネ、姉さんの事。パストルからみてどんな人だった?」
秋男はカレナの記憶を通して、今まで育ててくれたコルネが、本当はビークの実姉だったと知った。
それがビークと戦う事で、きっと気持ちが揺れてしまうだろう。
だから確認したいのだ。
ビークの事はよく知っている。
けれど、カレナの前で仕事の姿しか見せなかったコルネと、秋男の前で姉としての姿を見せていたコルネが、ビークとどこで、なにで繋がっているのかを。
「気が強くて、男勝り」
「ビークの事は可愛いがってた?」
「そりゃ勿論」
「カレナとどっちが可愛かったかな?」
「は?そんな事聞いてどうするんだ?」
「いいから答えて。宿題の回答に繋がるから」
「そりゃ、ビークじゃないか?なんだかんだ言っても、ビーク優先で仲間によく叱られてた。カレナ様を置き去りにするな!ってな」
秋男は声を立ててクククと笑った。
「これ、宿題と関係あるのか?」
「あるよ。姉さんの気持ちを知りたかった。ビークを大事に思ってる気持ちは、きっと今も変わってないと思う。だから、もう泣かせたくないんだ」
秋男の、意外に男らしい横顔に、グロールは頼もしさを感じた。
成る程、姫が惚れるわけだ。
グロールは、木の実を割った飲み物をぐいっと飲んだ。
「グロールは?」
ふいに、秋男の声のトーンが下がる。
「ん?」
「グロールは、ビークの事、………どうしたい?」
唐突に尋ねられて、手が止まる。
カレナの事もビークの事も、パストルにとって大事な存在。
自分の子供のような、弟のような………。
しかし、秋男いや、カレナはそれをよく知っている。
グロールは秋男を見た。
真っ直ぐ見つめられ、分かった。
秋男は、グロールの気持ちを 知っている上で聞いてるのだ。
「………助けたい」
だからこれが素直な意見。
「うん」
秋男は空を見つめ、ふっと息を短く吐いた。

さっき戦った時は、カレナのオーラがあったはずなのに、もうすっかりいつもの秋男に戻っていた。
いや、前より少し頼もしくなった………か。
「ビークから酷い目に遭ったのに、秋男はビークを心配してくれるんだ?優しいな」
「失うのが怖いだけだよ。優しくなんか無い」
そう答えて、秋男はグロールにもたれ掛かった。
「急にどうした?」
「ちょっと疲れた………かも」
「二日も塔の中にいたもんな。寝るか?少し遅くなるが、朝出発にしよう」
グロールは、秋男の膝枕になってやった。
「さっきはごめん」
「さっき?」
「塔から出てきた時だよ。………カレナはね、縛られているパストルの姿を見たくないんだよ」
「縛られてなんか………」 
「お前さぁー秋風の事、好きだろー?」
秋男は目を閉じて、のんびり話す。
「は?急になんだよ?秋男には関係ないだろ?」
グロールの体が少し揺れると、秋男は声に出してクククと笑った。
「あるだろ。双子なんだから」
「あ、そうか」
グロールは優しく笑った。
「カレナに会ってから変わったなー。ご自慢のポーーカーーフェーイスはどうしたんだよ」
そんなに………カレナを待ってたの?
「そんなに差があるか?」
「あるよ。前よりも表情がコロコロ変わってるよー。そんな風に笑った顔、初めて見た。………顔色も良くなってる」

ずっとカレナの事ばかり考えていて気づかなかった。
カレナばかり探す俺を、周りを見てなかった俺を、秋男にとって、ただ仲間という関係だけの俺を、ちゃんと見てくれてたんだな。

秋男は再び、声に出してクククと笑った。
少し目頭が熱くなった。
でも気づかれる訳には、、、いかない。
秋男は沸いてきた感情を飲み込みながら、続ける。
「カレナは居ない。けど、僕がいるから。………僕で、足りるかな?」
再び大粒の涙をこぼしながら、グロールは黙ったまま何度も頷いた。
いつの間にか二人は、そのまま深い眠りについた。

次に目が覚めたのは、丁度日の出時刻だった。


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