SOLVE A RIDDLE〜双子の勇者たち〜

+秋男+

グロールはずっと秋男の帰りを待っていた。
二度目の夜が更け、森の中は真っ暗になった。
火をつけると、彼の周りがぼうっと明るくなった。

相変わらず背中を塔にあずけた格好をしているので、塔が消えた瞬間、グロールは大の字に寝そべった格好になってしまった。
他の塔でもそうだったように、塔が消えたと言うことは、覚醒したと言う事。
グロールは慌てるでもなく、そのまま、秋男の姿を待った。
頭の向こうの方で、誰かが歩く気配がする。
それは秋男だと直ぐに分かった。
グロールの顔に、黒い影が覆う。
ズサッ!!
剣で何かを斬る音が聞こえ、次の瞬間、グロールの顔の両脇に、何か重い物が落ちた。
「カレナが覚醒した途端、これだ。………よっ!!」
グロールは勢いつけて起きあがり、剣を抜いた。
秋男と背中合わせに構える。
見ると無数の赤く鋭い目が、二人を囲んでいた。
「マリネを帰したのは正解だったね」
「いや、偶然さ。結果オーライだろ?」
「………ふぅ〜ん」
赤い瞳が飛びかかる。
猛獣だ。
「えい!」
秋男は剣を振る。
剣を振るう度に、秋男の体がぼうっと赤く光った。
前よりもずっと身が軽い!
これがカレナの力なのか!?
「僕は疲れてるんだ。一気にカタをつけてやる!剣火剣炎!!」
秋男の剣から炎が溢れた。
振りまわすと、剣先の様に鋭く尖った炎が猛獣目掛けて飛んでいく。
その一太刀で大抵の猛獣は倒せたようだ。
「へぇ、剣火剣炎」
グロールは楽しそうに援護した。
「フィニッシュ!」
二人は、剣を鞘に納めた。
秋男はグロールに近づいた。
しかし、少し通り過ぎ、背を向ける。
「………ただいま………」
―秋男じゃない―
今、ここにいるのはカレナ?
「宮殿から黙って出るなと、あれだけ言ったのに」
「ごめん」
「剣の稽古の途中で出て行きやがって」
「ごめん」
「一体何年待たせた?心配かけんなよ!!」
抑えきれずに怒鳴った。
秋男の前に回り込み、胸ぐらを掴んだ。
こんな風に怒鳴ったのは何年ぶりだろう?
「ごめんなさい」
声が、あの幼いカレナの声が聞こえる。
「………!!」
目の前の秋男が、カレナの面影と重なる。
「私はどれ程、あなたを………」
目の前に居るカレナを、今すぐ抱きしめたい!!
「なのに、この私を置いて、先に亡くなるなんて………」
グロールは秋男の肩に手を掛けた。
秋男は力を抜いていたのか、ふらふらと後ろへ倒れ、尻餅をついた。
暫くあぐらをかいたまま、動かない。
立ち上がって、パストルに会いたかったと甘えて欲しい。
何年も会えなかった、このぽっかり開いた心の隙間を、今すぐ埋めて欲しい!!
しかし、
「あ、そうか………ふ〜ん………」
秋男は、そう言って立ち上がった。
「グロール!お前は何か勘違いしてる。僕はカレナじゃないし、お前の王でもない!!」
グロールの胸を、手の甲でドンと叩いた。
普段温厚な秋男からは想像つかない物言いだった。
「カ、レナ………?」
グロールは小さな子供が、何かを欲しがるように、秋男に手を伸ばす。
しかし秋男は、その手を振り払う。
「カレナは死んだんだよ!!」
想像していた再会シーンを………得られなかった。
グロールは、絞り出すような声で答える。
「分かってるさ」
「………分かってないだろ」
秋男は彼を睨みつける。
「僕の帰りを、マリネを追い帰してまで一人で待っていたのが証拠だろう!?そんなにカレナに会いたかったか!そんなにカレナの存在が重いのか!だが、カレナは死んだ。ほら、もうどこにもいない!」
秋男は両腕を広げた。
「よく見ろ、こいつは秋男だ!」
今度は自分の胸をドンと叩いた。
「お前はカレナに束縛されてんだ。いつまでも悩んでるなよ!みっともないだろ!!」
秋男はグロールの胸ぐらを掴んだ。
「………っるっせー」
グロールは低く呟き、続ける。
「っるせーな!!ああそうさ。確かに俺はカレナに束縛されている。………分かってるさ。そんな事、遠の昔に理解してる!!」
グロールも珍しく怒鳴り、秋男は一瞬、体をこわばらせた。
しかし、 途中から グロールの声のトーンが低くなった。
“泣いてる?”
グロールは秋男の腕を振り払った。

分かっていた。
夢に見た再会なんて、自己満足の夢でしかない事ぐらい、分かっていた。
だけど、夢から覚めるのが恐かった………。
本当に失う気がして………だから、現実が恐かったんだ。
それを、ことごとく………この男は………。

グロールはクククと笑った。
「あははは」
腹を抱えて笑う彼を、秋男はただじっと見ていた。
「そうだよ。カレナは知らない。俺がどれだけ探したか。このペンダントがどれだけ重かったか」
笑いながら、ペンダントを引きちぎった。
「………カレナの存在を守りきれなかった己の不甲斐の無さを、お前は知らないだろ!!」
グロールは呟き、そして叫んで大粒の涙を流していた。
「あぁ、知らない」
秋男はグロールに近づき、彼の顔に手を伸ばした。
「………知らなかったよ」
そう言って、そのまま抱き寄せる。
グロールも戸惑いながら、秋男の腰を抱き寄せた。
「………パストル………会えて、良かった………」
秋男はそのまま気を失った。


戻る 次へ

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送