SOLVE A RIDDLE〜双子の勇者たち〜

+秋風+

魔界の塔が消え、中からカレナが出てきた。
「カレナ!!」
グロールはカレナの元へ駆け寄り、しっかりと抱きしめた。
「会いたかった!!」
抱きしめたグロールは、よくみると少し別人で、あぁ、この人がパストルかと思った。
「僕もだよ。パストル。会いたかった!!」
二人は抱きしめ合った。
パストルはカレナの前髪を掻き上げ、囁く。
「愛してるよ、カレナ」
「僕も。もう離さないで!!」
そして二人は口づけた。

秋風はハッと顔を上げた。
汗だくになって、着ている物を濡らしていた。
「ホモ!?」
心臓がドキドキ鳴った。
カレナとパストル、お兄ちゃんとグロールが………!!
お、男同士で………!?
ぶんぶんと首を横に振った。
グロールがカレナを愛してるなんて言うから!
「夢で良かった〜・・・」
秋風は起きあがり、シャワーを浴びた。
そんな事、あるわけないじゃない!
カレナを愛してるからって、お兄ちゃんがそんな………。
でも、あの鼻っ垂れカレナならあり得る!!
カレアに覚醒した秋風は、心で頷いた。
でも逆にパストルにはあり得ない。
「あ〜もう!!早く帰ってこい!!」
秋風はシャワールームを出て、月明かりが差す窓辺に腰かけた。
そして ペンダントを見つめる。
ペンダントは、月明かりで鈍く光った。
魔界の塔から、まだ二人は戻っていない。
秋風がカレアに覚醒した翌日、まだ帰ってこない二人を、皆が迎えに行きたがったが、マリネはそれを止めた。
グロールは、カレナに会いたがっている。
誰もが知っているから、結局誰も迎えに行かなかった。
―そこまで大切な存在―
お兄ちゃんがカレナだったなんて………。
あの鼻っ垂れカレナがね………。
そして恋心芽生えたグロールが、カレナが大嫌いって言った、あのパストル。
秋風の心は複雑だった。
「明日で三日目だよ〜」
秋風は悪夢にうなされ、ここ二日、満足に眠れずにいた。
「グロール、知ってたのかな?これがカレアの持ち物だって事………」
貸してくれた振りをして、本当は返してくれたんだね。
「カレナ、私も、早く、会いたいんだよ………」
つぶやき、ペンダントを握りしめたまま夜空を眺めた。


+++


何日過ぎただろう。
弟を捜しに城を抜け出し、まだ子供である王の心配もせず………。

コルネはふらふらと地界を彷徨っていた。
まだ子供なのよ。
王と一緒だったらどんなに安心か………。
コルネは寝る暇を惜しみ、昼も夜も情報を頼りに彷徨い続けた。

途中、族に襲われた事もあった。
王の教育係として、面が割れているせいで命を狙われた時もあった。
しかし、持ち前の呪術でなんとか逃げ切る事が出来た。
時には何者かを殺した。
杖の先が赤く染まった。
途中の小川で洗い流すと、川が赤く染まった。
それを見て、もう小川の水は飲めなくなった。
初めての感触に体が震え、涙が出て止まらなかった。
「ぐえっ………」
胃からは何も出なかったが、えずき苦しんだ
飲まず食わずにいたせいか、体力が次第に衰えていく。
でも、今魔界に戻る訳にはいかない。
戻れば王を探す命を受けるだろうし、今は戦争の渦中なのだ。
ただ自分の身の安全を考えればいい。
そう、生きていれば必ず会う事が出来るのだから………。
「ごほっ、ごほっ」
何日も水を飲んでいないせいか、喉に何かが刺さる様な痛みに襲われる。
咳が始まると止まらない。
「………!」
ふと、背後からタダならぬ気配を感じ、近くの木に飛び乗った。
「やっぱり教育係は凄い凄い」
三人の男が大きな鉈を持って木の下に居た。
「教育係?」
コルネは眉をひそめた。
素性を知っている者か。
「………要求は?」
「王の命」
太った男が言った。
先日もそうだった。
皆が、カレナの命を狙っている。
急に?一体、何故!?
「おや、知らないんですか?王の命を奪うと、多額の賞金が貰えるんですよ」
「何ですって!?」
「王の居場所を教えてください」
三人の男は、声を揃えた。
「………」
「ほらね、仰らないでしょ?ですから、お嬢さんの腕を一本頂こうかと思ったんですよ」
また太った男が言う。
残りの二人はうんうんと頷いた。
「王の居所を腕一本程度で教えるとでも思ってるの?あなた達、元は商人ね?」
「そうです。流石、見る目が有りますね」
今度は痩せた男だ。
話し方が妙に丁寧だ。
それに、べらべらとよく喋り、交渉を申し出る。
こんな風に喋る者は、商人しかいない。
「金に目が眩んだか………。首謀者は誰?情報の出所は?」
「私達は商人ですからね、タダで情報を提供する訳にはいかないんですよ」
「そうそう。お嬢さんのその腕と引換に教えても構いませんよ」
「お断り!」
コルネはそう言って、杖を構えた。
「戦うと仰るのですね」
男達も身構える。
痩せた商人が木によじ登ろうとした。
コルネは杖を構えたまま、太った商人の体目掛けて飛び降りた。
男は鉈で構え、攻撃を防ぐ。
杖とぶつかり、鈍い音を立てた。
「術師ですか。木の杖が折れない」
ふぅとため息を付くと、残りの男が声を上げて笑った。
「………手加減はしない!!」
こんな事で体力を使っている場合ではない!
一刻も早くビークを探したいのに!
三人は鉈を振りまわす。
コルネは杖で呪術を使うが、相手は三人。
気を抜くとテリトリーを取られてしまう。
これ以上近づくとやばい!!
あんなので襲われたら、本当に腕を失ってしまう。
鉈が当たりそうになり一瞬怯む。
「今だ、かかれ!!」
木の根に躓き、転んだ。
「!!」
その時、一人の若者が男とコルネの間に入った。
顔は見えないが、長身の男性だ。
若者はスラリと延びた剣で鉈を受け止めていた。
「逃げろ。………早く!」
「………」
コルネは地面に転がった杖を持ち、立ち上がる。
と、言うより、驚いて立ちすくんでいる。
「逃げなさい!」
見かけよりは力があるらしく、剣で鉈を押さえ込み、男の動きを封じた。
「嫌です」
コルネはきっぱりと断り、杖を構えた。
「………名は?」
「コルネ」
若者はコルネに名前を聞いた。
「じゃぁコルネ、援護を!」
「はい!」
若者は剣でコルネは呪術で、戦いは再開された。
三人の商人はまとまって向かってくる。
それを若者一人が押さえ込み、その間にコルネが杖で援護した。
「おーい、大丈夫か?」
ふと、声が聞こえる。
若者の仲間なのか、さらに二人の若者が現れた。
「大丈夫、ただの商人だ」
鉈をはねると、二人の若者がそれを奪った。
三人の商人は一斉に無防備になる。
三人の商人、対、三人の若者と術師の女………。
「ひぃぃ、命だけはお助けを!!」
商人は突然泣き出した。
今度は泣き落とし作戦か。
「コルネ?」
若者達は、この処分をコルネにゆだねた。
「それよりも尋ねたい事があります」
コルネが答えると、若者三人は頷き合い、三人の男を後ろ手に縛った。
三人の商人の目は、女一人だと侮っていたせいか、若者が増え、急に恐くなったらしい。戦意を喪失している。
「首謀者は?」
「わわわわ………私達は何も知りません」
コルネは剣の若者をチラッと見た。
若者は太った男の首筋に剣を突き立てた。
「ひぃぃぃ!!!」
「ああああぁそうだ、あいつのせいだ」
「あ、そうだ、ビークがやったんだ。ビークが!」
「ビーク?」
コルネの顔が曇ったのを、若者は見逃さなかった。
「そそそそ、ビーク、ビーク。やつが王を殺すとか言ってた」
コルネは太った商人の首を掴んだ。
「ひぃぃぃ!!」
「本当の事を言え!」
「ほほほほ本当です!!ひぃぃ、命だけはお助けを………」
コルネは目を閉じた。
どうすればいい?
本当にビークがそんな事を言ったのだろうか?真相が………分からない。
「何を信じればいいか………」
「コルネ、訳ありの様だな?」
「………商人は、このまま置いていく」
「こここ、このまま!?魔物が出たら?」
「食われろ」
「そ、それだけは………!」
「ビークがそんな事を言うはずがない!!ふざけるな!!」
コルネは叫び、杖で男の胸を突いた。
血が飛び散った彼女の頬には涙が流れていた………。


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