SOLVE A RIDDLE〜双子の勇者たち〜

+マリネ+

カレナは走った。
ビークを先頭に、無数の男達が群がって追って来る。
「あっ!」
崖だ!!
「カレナ 死ネ!!」
行き場を失ったカレナに、皆が一斉に飛びかかる。
カレナは仰向けになって倒れた。
ビークはカレナの頭を押さえつける。
普通では考えられない程の、もの凄い力だ。
誰かに両腕を押さえつけられ、身動きが取れなくなった。
顔の前に剣が見える。
これで首を取ろうというのか!?
「うわぁぁぁ!!」
カレナは必死で抵抗した、その時!
「ぎゃぁっ!」
「うぎゃぁぁぁっ!!」
男達の悲鳴が聞こえる。
「ひぃっ!」
何をしたかは覚えてない。
思い出せない!!
気づくと、そこは火の海だった。

もう、悲鳴は聞こえない。
「がはっ………!!」
首を絞められていたせいで、うまく呼吸が出来ずに咽せた。

“カレナは、逃げろ!”

「ビーク………。ひっく、ひっく」

“馬鹿、王様と友達は全然違うだろ!”

カレナの両目から涙が溢れた。
「ビーク………」
目の前に転がった真っ黒の物体………
「あああああああっ!!」
ビークの名を何度も呼んでみたが、ソレは返事をしなかった。

+++

「マリネ、わりい、やっぱ秋風の所へ行ってくれないか?」
二人はずっと無言で過ごしたが、日が暮れてから、ようやくグロールが口を開いた。
「いいえ、私も秋男さんを待ちます」
「秋風らは、その気球が無いと帰れないから」
「それはグロールも同じでしょ?」
「いいや。魔族は空中を移動できるから大丈夫」
「でも!」
グロールはマリネの目を見ずに、手で言葉を遮った。
「マリネ、昨日の今日だから覚えてると思うけど、マリネは俺に言えない事があるよな?」
「あ、あの、天界の塔での出来事ですか?それは………!」
「俺も同じ理由で、マリネに見せたくない事がある。それが、こいつ」
グロールは親指で後ろの塔を指した。
マリネは塔を見上げた。
この中に秋男さんがいる。
カレナに覚醒した秋男さんを見て、グロールは………
あっ!!
“グロールにとって、カレナの存在が私たちの中の誰よりも大きいのですね”
そうか、グロールが泣ける場所は、カレナの所。
カレナが秋男さんなら、きっと大丈夫。
「分かってくれるよな?姫さん?」
私には兵士に見せられない部分があって、同じように、グロールも姫には見せたくない部分がある。
マリネは暫く考えて、やがて頷いて、にっこりと微笑んだ。
「姫と兵士の間を埋める事は出来ないものですね。分かりました」

グロールはマリネを気球まで送った。
飛ぶ準備は勿論グロールが全て行った。
そして 姫を気球に乗せる。
「秋男をちょっと借りるね」
グロールは投げキッスをする。
「!!」
マリネは一瞬、きょとんとして、すぐにクスクスと笑った。
「グロールの場合、通常の十倍は高くつきますわよ」
手を振って別れた。
カマかけたのに、笑いやがった。
グロールは先日の秋男とマリネの事を思い出し、嫉妬した。

+++

数時間後、マリネは妖精界の塔に着いた。
「マリネ!あれ?あいつらは?」
マリネは事のあらましを二人に説明した。
「秋男がカレナって事、あいついつ知ったんだ?」
「また黙ってたのね。仕方のない人」
「そう言うわけで、先に秋風さんを迎えに行くように言われました」
「いっつも勝手言いやがって!!」
「仕方ないわ。とにかく秋風が出てくるのを、三人で待ちましょう」

+++

「パストルなんて大嫌い!!私、探してくる!」
カレアはそう言い、城を飛び出した。
しかしカレナの居場所は分からず、何日も、いや、何年も掛かってしまった。

その間、国がどうなったかは知らない。
心配しているであろう大人達の事もどうでも良かった。
ただ、会いたいと思った時にカレナが居なかったから。
それだけだった。
涙なんて出ない。
だって、絶対カレナに会えるもの。

カレナは言ったわ。
僕がカレアを守るからと。
約束にペンダントをもらった。

カレアはカレナから貰ったペンダントを握りしめた。
魔界の紋章が刻まれた、歪なトップ。
一生懸命作った、カレナの姿を想像して、カレアは微笑んだ。

この自信はこのペンダントから送られたものだと思う。
今のカレアにとって、その自信こそが友達で、それだけが頼りだった。
ただ、それだけが………。

「カレア!!」
空中をふらりと散歩していたら、突然名前を呼ばれた。
そこにはカレアよりも背が伸びてしまったカレナが居た。
カレナのくせにカレアより背が伸びるなんて生意気!!
「誰?」
カレナって直ぐに分かったけど、意地悪して聞いてみた。
「僕だよ。カレナ」
「本当に?!」
夢みたい。
あれから何年も経ったのに、カレナに会えるなんて!!
「どうしよう、どうしよう」
だけどカレナは再会を喜んでるようでは無かった。
カレアを見て、急に泣き出した。
「どうしたの?」
カレアは、何年経ってもカレナは泣き虫なんだと思った。
「ビークを、僕が、ビークを、ひっく」
「泣いてちゃ分からないわ」
「来て………」
カレナに連れて行かれたのは、草も生えていないような荒野の岩陰だった。
そこに信じられないものを見た。
黒く固まった物体。
「ビークを………僕が」
近づいて見ると、その物体はビークだった。
「まさか」
「本当だよ。僕、襲われたんだ。物凄い力で、それで、僕は抵抗して、つい………」
「カレナにそんな力ある筈無いじゃない!!」
カレアは思わず叫んだ。
「どうしよう。ビークが、ひっく。パストルと仲良かったのに。僕、大好きなパストルの友達を………」
本当らしい。
この黒いものはビークで、カレナがやったんだと。
カレナは嘘をつけない性格だから、カレアは直ぐに信じてあげた。
「ビーク………」
二人はわんわん泣いた。
仲は良かったとは、あまり言えないが、ビークの事は嫌いでは無かった。
時々一緒に遊んだ事もあった。
カレアはビークと組んで、カレナを泣かした事もあった。
二人は岩陰にもたれ、泣き疲れてそのまま眠ってしまった。

+++

「あ、おい、塔が消えたぞ!?」
プレーノが叫び、その方向を見ると、塔は消滅していた。
「そう言えば、天界の塔もそうでしたね。秋風さんが出てくるはずですよ!」
マリネとフレノールが駆けつけると、秋風はペンダントを握りしめて、幼い子供のように泣いていた。
「秋風?………カレア?」
フレノールがそう呼びかけると、秋風ははっと顔を上げて、フレノールに飛びついた。
「ファジィ!」
フレノールは秋風をしっかり抱き留めた。
「大丈夫ですか?秋風さん」
マリネも心配しているようだ。
「あ、ごめんなさい。ちょっとカレアの記憶が強すぎて。でももう大丈夫」
秋風は我に返り、涙を拭った。


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