SOLVE A RIDDLE〜双子の勇者たち〜

+パレオ+

長い沈黙が続いていた。
言葉をかける者もいない。
ローズもグロールも黙ったまま、根競べの様に静まり返っていた。
しかし、沈黙を破ったのは、ローズ本人だった。
「回答が難しいですか?ヒントを差し上げますわね。初めて会った頃、グロールさんが秋男さんに出した宿題の回答と、内容は、同じだと思いますよ」
そして、グロールに、囁く。
「それに、あなたは先生なのに、お手本を見せなくてもいいのですか?」
「………分かったよ」
そう言われ、グロールはやっと口を開いた。
目を閉じて、深く深く息を吐いた。
そして グロールは、ローズでは無く、秋男に目を向けた。
「秋男、ドリームマスターの事は覚えてるか?」
秋男を初め、皆は安堵のため息をついた。
“良かった!なんだか分からないけど、話してくれるんだね!”
秋男は大きく頷いた。
「うん、えっと確か、例えば十年設定して呪いをかけると、即十年年を取るってやつだったっけ?」
グロールは頷いて続けた。
「秋男か秋風が赤ん坊の頃、どちらかカレナだと知り、ビークから逃がすために、二人にその術をかけようとした。すると花華さんが庇ったので、誤って花華さんに術がかかってしまった」
一気に 言い終わり、「これでいい?」とローズを見た。
「本当に回答だけを、上手に答えるのですね」
あきれる風でもなく、さらりと告げた。
「じゃぁ、グロールは悪くないね!」
「あぁ、悪くないな。お前の事は好きじゃないが、客観的に見ても、お前を悪いと思わないよ」
プレーノも続け、秋男に笑顔が戻った。
しかしグロールはそんな二人の笑顔を正視出来ずにいた。
ローズはニコリと笑って立ち上がった。
「マリネさん、引き継ぎのために、昨日までの出来事をお話しましょう。ついて来て下さい」
「はい」
マリネは秋風に微笑み、小さく手を振った。
秋風も手を振り返すと、姫は二人とも部屋を出た。

誰かに話しかけられる前に、グロールは逃げるように、姫に続いて会議室を出た。
本当は秋男に隠している事がある。
宿題の回答として、答えなければならない事がある。

コルネが双子を育てた事は、みんな知ってるはずだが、花華に誤って術に掛けた時に、双子を守る存在があった事を、グロールは言わなかった。

双子の年齢は十七、コルネは二十四。
逃げた時の双子の年齢は二歳、じゃぁ、コルネは?
“本当に、回答だけを、上手に答えるのですね”
ローズは感づいたらしいが、これだけは、言うわけにはいかない。

一人部屋へ戻る。
そして静かな場所で、ビークからカレナを守ろうとした、悪夢の様な出来事を思い出した。

+++

「何て邪悪な気配!」
カレナとビークが行方不明になってから、数日が経った。
辺りは騒然とし、中には王の座を奪おうと武器を持って攻め込む輩が増えた。
「なんとしても宮殿をお守りせねば!」
パストルと同じ腕の立つ者は皆、持ち場を守ろうと必死だった。
「あっちで乱闘が始まったぞ!」
「火を使え!不届き者を焼き殺せ!」
「離してくれ。カレナは俺が探す!」
「なりませぬ。パストル様はこの場をお離れになってはいけません」
「そうです。カレナ様をお探しになりたいお気持ちはよく分かります。ですが、カレナ様が戻って来られた時、一番先にパストル様の腕の中で眠りたいと仰るに違いありません」
「ここはご辛抱なさいませ。カレナ様の行方は私どもが必ずやお探し致します」
パストルの部下達が蜘蛛の子を散らしたように宮殿から去る。
「パストル様………」
「何だ?」
「パストル様が死ねばカレナ様が悲しみます。ビークも悲しみます。ここぞという、その時まで、パストル様は、必ずその身をお守り下さいませ!!二人共、パストル様を本当の父親同然、お慕いしているのですから」
そして一礼して、宮殿から出て行った。

カレナの失踪は、他の世界にまで影響を及ぼした。
カレアがカレナを探しに出たまま行方が掴めず、また、ファジィは、この混乱より遙か前に、命を落としたと聞く。
世界一を誇る天界の神が………!?
また、ビークの姉も行方を眩ませていた。
「一体、何が起こっているのだ!?」
パストルはそんな噂の中で、カレナをただじっと待つしかなかった。

そんなある日の事、パストルの部下が、傷つきながら戻ってきた。
パストルが尤も信頼できる腕の立つパレオという戦士が肩を貸している。
「パレオ!?」
「天界の神が死んだのは本当らしいな。報告が無かったのは滅んでいたからだ。………っちっ、世界中荒れてやがる」
パレオは天界まで使いに出ていたのだ。
「それよりお前にとって、もっと大事な事が分かった。ビークが見つかったらしい。こいつの話を聞いてくれ」
パレオは天界の調査後、宮殿に戻るなり傷ついた兵士を見つけ、パストルの前に連れてきてくれたのだ。
「ビークが見つかった!?それは真か?」
「はい。私の班が確認した結果、あの邪気はビーク本人から発するものでした」
「何だって!?それで?」
「はい、ビークに話を聞こうと近づいたのですが、どうも様子がおかしいのです。白目をむいて全く精気がないのです。私の事も気づきませんでした」
「そんな馬鹿な!」
ビークはパストルにしか懐かなかったものの、腕の立つ戦士には興味があり、宮殿中の戦士の剣の癖は、少なくとも顔は名前と一致して覚えていたはずだ。
「ビークのあの邪悪な気配は只ならぬものを感じさせられます」
「そ、それで?カレナは?一緒じゃなかったか?」
「カレナ様のお姿は確認できませんでした。ただ、ビークはカレナ様の元へ行くような事を呟いていました」
「場所は?」
「クミコ様に仕える戦士の家に向かっているようです」
「地界の神?何故そんな所へ?」
「分かりません。恐らくカレナ様はそこに………」
パストルは立ち上がった。
一歩たりとも離れるなと言われた宮殿。
カレナを見つけ出せば、また元に戻るだろう世界。
そのカレナを探し出せるのは、もう他にはいない。
パレオはこの宮殿でパストルが最も信頼できる戦士だ。
「パストル、お前の行動は読めている。ここは任せろ。早くカレナ様を助けるのだ」
パストルは急いだ。
地界に向かって最速ルートを使った。
反応は………何となく分かる。
「いた!」
ビークは空を飛ぶ事が苦手だったから、直ぐに追いつく事が出来た。
「ビーク!」
「パストル!?」
「俺の事は分かるんだな。いい子だから帰ろう」
パストルは手を差し伸べた。
しかし、ビークの背後にかかった紫色の霧が、彼の意思を支配した。
「オレハ カレナ ヲ コロス!」
何かにとり憑かれたように、目を白くさせた。
「ビーク!」
ビークは再び飛び出した。
パストルも慌てて追う。
今のは何だ!?
パストルの背筋は凍った。
雰囲気も、外観も少し変わっていた? 嫌な予感がする!!
その予感は想像を超えて的中した。


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