SOLVE A RIDDLE〜双子の勇者たち〜

+秋男+

シャロット城に着くと、ローズとサンクスは目を覚ました。
しかし秋風はまだ昏々と眠り続けていた。
城の者は秋風にベッドを用意した。
皆は秋風を取り囲んだ。
秋風の左側を頭の方から順に、秋男、プレーノが見守った。
右側はフレノール、ローズ、サンクスの順だ。
グロールは出入り口付近で腕を組み、背中を壁に預けて静かに見守っていた。
ふと、秋風の目から涙がこぼれた。
「秋風?」
秋男が心配そうに呼びかける。
グロールも聞き耳を立てていて、酷く心配しているようだった。
秋男は指先で、妹の涙を拭ってやる。
「あ、秋風!!」
秋風が目を覚ましたらしい。
秋男が叫んで抱きついた。
「お兄ちゃん、フレノール?」
「秋ちゃん!」
皆はガタガタと立ち上がった。
その様子を見て、グロールは部屋から姿を消した。
「私、一体?」
秋風はポツリと呟いた。
「秋風、お前凄かったぞ!?」
秋男とプレーノは興奮して声を張り上げた。
「二人とも静かにしなさい!」
「フレノール、羽、大丈夫?」
秋風が訊ねる。
「羽?ああ、大丈夫よ」
ビークに貫かれた羽の事だ。
「あれは精神から作られた幻影なの。だから全く問題ないのよ」
「良かった」
「えーマジ?」
しかし秋風の言葉はプレーノにかき消された。
プレーノが再び声を張り上げたからだ。
「だから俺が心配時、あいつとニヤニヤ笑ってやがったのかよ!?」
「まぁね、ごめんね」
フレノールは舌をペロリと出して続けた。
「それより秋風、体は大丈夫?何か変化あった?」
「うん。夢を見たけど、忘れちゃった」
「そう」
ローズとサンクスは秋風の無事を確認し、出て行った。
「ねぇ、グロールは?」
「さっきまでいたんだけど………」
秋風は起き上がった。
「寝てろよ。まだ出発しないから」
「うん………もう大丈夫」
秋風は秋男から差し出された水を一口飲むと、目に涙を溜めた。
「秋風?どうした!?」
「うんん、分からないけど、急に」
「秋風、何の心配もいらないよ」
「うん………」
秋男は秋風を抱き寄せ、よしよしと頭を撫でた。


その日の夜には秋風は本調子に戻っていた。
予定通りにマリネも到着していた。
マリネは任された気球の整備に立ち会い、実際に皆と会ったのは、秋風が目を覚ましたその夜だった。
秋風が元気になった所で、まず王室に通された。
秋男、秋風を筆頭に謁見を軽く済ませ、事のあらましを今後も報告する条件で、シャロット城は彼らの本拠地となった。
「これからおいしい料理が食べられるし、お風呂も毎日入れるからラッキーだなっ」
「王は秋男さんと秋風さんのお爺さんにあたる方ですからね」
そう言って サンクスは、皆を会議室に導いた。
ローズは既に席に着いていて、皆が席に落ち着いた頃に、マリネが入ってきた。
マリネが会議室に着くと、グロールは椅子から降りて跪く。
彼女は軽く首を傾げ、
「グロール、ご苦労様」
と、応えた。
その姿を見て、秋風は何かを感じたが、感じた何かを確かめる余裕もなく、会議が始まった。
「皆さんはマリネをご存知ですよね。紹介が省けて良かったわ。早速本題に入りましょう。 フレノールさん、前世の事をご説明くださいますか?」
「はい。はるか昔、この国は四つの世界で成り立っていました。四つの国とは妖精界、魔界、天界、地界の事です。各国には代表となる神がいました。今の世界では王にあたる人物です。私は天界の王でした」
「ええっ、お前、そんな偉い奴だったのか??」
プレーノがびっくりする程の勢いで立ち上がったが、周りがあまりにも静かだったので、慌てて座りなおした。
「グロールの本当の名前はパストルです。魔界の住人で幼き王の教育係でした。その王の名前はカレナです」
「カレナって、ビークが狙ってたヤツの名前だったよな?」
再びプレーノが騒ぐ。
「もしかして、そのカレナってのが、秋風だったの?」
秋男もつられて声を上げる。
「あ、あの、水がぶわーって出た時!凄い力だったよな〜」
プレーノと秋男は無邪気にはしゃいだが、秋風は静かに呟いた。
「うんん、私じゃ無かった」
「秋風は水を司る妖精界の王女、カレアだった。カレナだと思ったんだが、違ったんだ」
秋風はグロールの視線を感じたが、顔を上げられずにいた。
グロールが望む人物−カレナ−じゃなかったから………。
「秋風も神だったの?すっげー!でも、四つの国って事は、他にもあと二人いるって事?」
「そう。魔界のカレナと、地界のクミコ」
「フレノールさん、その前世の事と、秋男さんが狙われている事は、繋がっているとお考えですか?」
「はい。今までの事はともかく、今回の件で、繋がったと確信しています」
「今回の件でどう繋がったの?」
秋男が訊ねると、皆が興味ある顔でフレノールを見つめた。
「その前に、ひとつ言っておきたい事があります。秋男君が狙われていると言う話ですが、実は、秋風が狙われていた事が判明しました。事が起こるまでにはっきりしなかったので、説明する事が出来ませんでしたが、それは皆が身を持って体験したままの事ですので説明を省きます。秋風が狙われていた理由は、彼女がカレナだとビークが 思いこんでいたからです」
「それって、前世の繋がりがあるって事を裏付けてる事になる?」
秋男がそう言うと、フレノールは頷いた。
「でも、秋ちゃんはカレナじゃ無かった」
「じゃぁ、人質の姉さんはどうなるの?」
「そこです。返してもらうには、ビークよりも先にカレナを探し出し、カレナの命を差し出すしか方法がありません」
「命を差し出すって、お前………」
「勿論、振りだけ。でも、私達より先にビークがカレナを見つけてしまったら」
「姉さんがどうなるか判らないって事だね」
「ま、うまく行けばの話しだけどね」
「分かりました。兵を出して、カレナを探させましょう。とは言え、秋風さんの時のように、上手く見つかるとは思えませんね」
「はい。目覚めていなければ意味がありません。特にこれと言った目印もありませんし」
「ローズさん達にはビークの居場所を突き止めて欲しい」
ずっと黙っていたグロールが口を開いた。
「それは危険だろう?いくらローズさんとサンクスさんはシャロット一魔術に長けてるからと言って二人だけでは」
「ビークの居場所が分かったら俺達が潜入する。とにかく探してくれるとカレナの事は後回しに出来る」
「グロール、あんなにカレナに会いたがってたのに、それでいいの?」
秋風が思わず叫んだ。
「………人質が優先だろ。俺らは明日から塔を詮索をして、少しでも情報を集める!ローズさんが何かしたいって言ってくれてるんだから、甘えてもいいんじゃないか? ローズさん、寒い地方を当たってくれ」
グロールはぶっきらぼうに答えた。
カレナを追って来たはずなのに、もう興味がないなんて嘘だ………。
秋風は心の中で呟いた。
そんなに、カレナが見つからなかった事がショックだったんだ………。
「グロールさん分かりました。私達はカレナではなく、ビークを探しましょう。サンクス、早速似顔絵と軍の準備を」
「かしこまりました」
サンクスは部屋を出た。
「話がまとまった所で、ひとつ、グロールさんに伺いたい事があります」
「はい?」
「パストル。花華さんが仰っていましたわ。襲われた時、2人の魔族だったと言う事。その内の1人がパストルと言う呼ばれていたと言う事。それに、術をかけたのはパストルと言う名の魔族だったそうですが、本当ですか?」
「えっ!?」
秋男とプレーノの驚きの声が重なった。
秋風も、ハッと顔を上げた。
ローズはグロールを真っ直ぐに見つめる。
グロールは無言で目を反らしている。
心当たりがあるのか?誰もがそう思える反応だった。
秋男は信じられなくて机に手を付いて立ち上がった。
「グ、グロール!グロールはパストルなの?母さんの命を狙ったのは、お前なのか!?」
無表情だったグロールが、秋男の声を聞いた途端、顔色を変える。
「嘘だよね?僕達の命を狙ったなんて、嘘だよね!?グロール、僕の目を見てよ!」
しかし グロールは秋男の目を見ようとはしなかった。
「どうして弁解しないんだよ!」
回答次第で、グロールが仲間にも敵にもなる。
ローズは仲間の信頼関係を保つために、わざと皆の前で確認したのだった。




戻る 次へ

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送