SOLVE A RIDDLE〜双子の勇者たち〜

+カレア+

「しとめたぞ、カレナ!」
まるで鬼の首を取ったかの喜び。
ビークにとっての天敵、ファジィは敗れた。
驚いて顔を出した秋風に向かって冷気を放つ。
「秋風さん、下がって下さい!」
サンクスがバリアを張り、ローズはそのバリアの中で火の玉を出した。
「くっ、何て威力なの!?」
ローズもサンクスも力一杯抵抗するが、秋風達の体は見る見るうちに凍って行った。
「秋ちゃーーーーん!!」
プレーノが叫ぶ。
「しまった、遅かったか!?」
ふと聞きなれた声がした。
「グロール?」
「ああ。最速のつもりだったんだが、すまない」
彼の姿を見て、彼女はホッとした。
今ビークを止められるのは、グロールしかいないと分かっていたからだ。
「私は大丈夫。それより秋風が氷に包まれたわ」
「あぁ。フレノール、もうひと仕事出来るか?」
「おい、俺の妹をコキ使うな。羽をやられたんだ。俺がやる」
グロールとフレノールは顔を見合わせ、クスリと笑った。
「何がおかしい?」
「いや。じゃぁ、頼む。俺が秋風の元へ行くまでの間、時間稼ぎをしてくれ」
「僕もやるよ」
「秋男休んどけ!」
秋男の腕からは大量の血が流れていた。
氷の刃にやられたらしいが、今はそれどころではない。
「いいや、秋風を放っておけない」
秋男はプレーノと共に、ビークの元へ走った。
同時にグロールは秋風の元へ走った。

カレナは火を司る黒妖精界の王。
秋風が本当にカレナなら、カレナの姿になれば氷の術など何とも無い筈である。
ビークはカレナの事を熟知している筈で、それを承知での攻撃だ。
だから凍った秋風の氷が溶けるまでに直接破壊しに来るだろう。
そんな事をさせる訳にはいかない。
今は時間を稼ぐしかないのだ。

グロールは秋風の元へ辿り着いた。
秋風だけでなく、ローズもサンクスも凍り付いていた。
いや、凍り付いているというよりも、氷に閉じ込められているようだった。
グロールはシャツの中から、首から下げたペンダントを取り出した。
秋風に渡したそれと形が対になっていた。
ペンダントをかざすと、秋風のペンダントに反応した。
「これで覚醒してくれれば」
グロールは祈った。
少しでも早く!
しかし、秋風の体は、グロールが予想していた事と異なる変化を見せた。
秋風が呼吸をしている。
良く見ると、彼女の体と氷の間に数ミリの隙間がある。
その隙間を水がチョロチョロと静かに上下に循環しているのだ。
「水!?」
秋風の体をまとう水は、次第に勢いを高めていく。
「グロール、ビークがそっちに!!」
ふと背後から声が聞こえた。
振り返るとビークがこちらに向かって来た。
「ビーク!」
グロールは走りより、剣でその姿を捕らえた。
「!!」
ビークはグロールを見て固まった。
「パ………ストル………!!」
その時、秋風の体に、第二の異変が起きた。
氷にヒビが入り、その中にある体から青白い光があふれ出した。

ドドドドドドド!!!

みるみる内に氷が溶け、ローズとサンクスはその場に倒れこんだ。
かと思うと、秋風の体から大量の水が、大蛇の様にくねくねと天に昇って行く。
「おのれ、貴様………」
ビークは空に飛び上がり、秋風の様子を伺った。
しかし秋風に意識は無い様子だった。
「秋風!?」
秋男はただ驚くばかりで、それ以上何も言えなかった。
秋風からそれ以上動く様子は感じられなかった。
ビークは暫く秋風を見つめていたが、無言でその場を去った。
「秋風………」
普段は落ち着いたグロールも、驚きを隠せない様子だ。
「秋風まさか!?」
フレノールも動揺している。
秋風は気を失い崩れるように倒れた。
グロールは慌てて彼女を抱きとめた。

+++

カレアは水を自在に操る、妖精界の王女だった。
優れた呪術の持ち主で、世間から一目置かれていた。
水の呪術に長けた彼女の血を絶やさぬため、他所に出すまいと、
次期国王妃の座を約束された少女だった。

カレアには仕事があった。
月に一度の神会議だ。
世界の王や王妃など、身分の高いものが神とし、国民が平和に暮らせるように話し合うのだ。
会場は魔界だった。
カレアは、仕事が嫌いだったが、この国の王は大好きだった。
まだまだお子ちゃまで、鼻ったれで、自分より弱いからだ。
いつもそれだけを楽しみに、魔界へ通ったものだ。

今日も彼女は魔界へ来ていた。
つまらない会議に参加し、生あくびをしなが生返事。
カレナはそんな彼女を見て、いつも笑っていた。
二人はとても仲良しだった。
大人ばかりの世界に子供が二人しかいないせいか、会議を終えると、一目散に会議室を出て、カレナの王室の庭で良く遊んだ。
虫捕りに水浴び、パストルを含めて鬼ごっこや隠れんぼ。
剣術の練習が捗るからとチャンバラごっこもやった。
幼い二人にとって、つまらない会議の後の、ささやかな楽しみだった。
「カレア様、そろそろ帰りますよ」
「もう?」
「ほら、お日様がもうオレンジ色になってしまいました」
「もう少し」
「来月の会議に、またお会い出来るではありませんか。さぁ、カレナ様にさようならを言うのですよ」
「分かった。カレナ、また遊ぼうね」
しかし、二人が一緒に遊べる日が、二度と訪れる事は無かった。


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