SOLVE A RIDDLE〜双子の勇者たち〜

+サンクス+

船は秋男達を無事に大陸へと運んだ。
「この辺のモンスターレベルじゃ、もう敵は無いな」
「いや、僕なんかまだまだ」
「ご謙遜」
プレーノが秋男に笑いかけた。
「皆さん、船から降りましたか?この浜辺を越えると城の者が馬車で迎えに来ていますから、着いて来て下さい」
サンクスの号令に従い、一向は浜辺から大陸の中心へと向かった。
「歩きにく〜い」
「細かい砂だからね」
秋風にそう答えた秋男は、急に秋風を抱いて浜辺に転がった。
「秋風、危ない!」
「何!?」
秋風が立っていた辺りを見ると、砂浜には氷で出来た刃が突き刺さっていた。
見上げると空がキラリと光った。
「秋風!!」
秋男が秋風の前で、剣を振り回した。
鋭い音が辺りに響き渡る。
が、同時に何者かが秋風目掛けて飛んできた。
「ぐわっ!」
咄嗟の判断で、秋男はそいつに飛び掛った。
「お兄ちゃん!」
「秋風、逃げろ!!誰か秋風を頼む!プレーノ、援護を!」
「分かってらっ!」
プレーノは杖を持ち、秋男の元へ駆けつけた。
秋風はフレノールに支えられ、茂みに隠れた。
ローズ達と合流し、フレノールは三人に告げた。
「ビークよ!」
「何ですって!?」
先に声を張り上げたのはサンクスだった。
「それでは秋男さんを保護しないと!」
「待って!」
フレノールはサンクスの腕を掴んで引きとめた。
「待ってください。狙われているのは秋風なんです」
「どういう事ですか?」
「今は一刻を争うので、説明は後回しです。グロールが来るまでに食い止められるか………」
「フレノールさん、私達はどうすれば良いのですか?」
瞬時に状況を理解したローズは、今すべき事を聞いてきた。
「はい。グロールが来るまでの間持ちこたえられれば大丈夫です。その間、秋風をお二人にお願いしたいのです」
「分かりました」
ローズとサンクスは秋風を命がけで守る決意をした。


「くっ!」
秋男とビークは刃を交えて揉み合った。
「秋男!」
プレーノの杖の先から丸い玉が飛び出す。
「秋男!」
秋男はプレーノの攻撃からうまくすり抜けた。
プレーノの攻撃を知り尽くしているのだ。
そしてその玉はビークの顔面にぶつかった。
しかしビークには通用しなかったのか、攻撃の手が揺らぐ事は無かった。
「何?効いてないぞ?」
「駄目だ!冷気系の攻撃は通用しないみたいだ」
「うっそーん!俺、氷しかだせねぇ」
プレーノは杖を抱きしめた。
「貴様、カレナをどこにやった!?」
「カレナ?そうか、お前がビークか!!」
交えた刃に力を込めた。
両腕をバネにして後ろへ飛びのいた。
「カレナを渡せ!」
「はん、カレナだって?知らないね、そんなヤツ!」
尤もである。
秋男もプレーノも前世の事は何も聞かされていない。
ビークは何やら呟き、両腕から冷気を発した。
とてつもなく冷たい空気が流れ込んできた。
痛い!!
しかし弱音を吐くわけには行かなかった。
コルネの事を聞くまでは。
秋男は意を決して、ビークの懐に飛び込んだ。
剣を振り下ろす。
「ぐわっ!」
それはビークの肩の鎧に突き刺さったが、致命傷を与えられなかった。
しかし幸いな事に、ビークの体が傾いた。
「てやぁぁぁ!!」
ここぞとばかりにプレーノが体当たりをする。
ドン!とぶつかり、ビークの体は転がった。
そこを秋男が馬乗りになる。
「くそっ!」
ビークは苦しそうに呻いたが、腰にあった袋から、小さな白い玉を出した。
白い玉を浜辺へ投げると、白い霧が漂った。
「あ、あれは!!」
秋男の目が捕らえたものは、紛れも無いコルネの姿だった。
「秋男君、ビークを倒すのよ!」
「姉さん!」
目の前にコルネがいる。
身柄を確保できれば………!!
「来ては駄目!何があってもビークを倒すの!!」
秋男は夢中で走った。
だって、目の前に姉さんがいるんだよ?
先に助けたい。
「姉さん!」
しかし秋男が手を伸ばすと、それは姿を消した。
「えっ??」
気づくと霧も無くなっていた。
「ふはははは。それは幻。コルネは俺様が預かっている」
「何だと!?」
気づけばビークの身は自由になっていた。

一部始終を茂みに隠れた四人は見ていた。
「コル姉、お兄ちゃん、あぁ………」
秋風はショックを隠しきれなかった。
「グロールさんが来るまで食い止められませんでした。そもそもグロールさんが来るという補償もありません」
サンクスが呟く。
「いいえ、まだ終わっていません。彼は必ず来ます。船から降りる時に約束しました」
「もしかしたらビークとグロールさんが同一人物という可能性も………」
「サンクス!例えグロールさんと同一人物であったとしても、それが何になるのですか。今の状況は変わらないのですよ。今は双子を守る事だけ集中しなさい」
ローズはサンクスを制した。
フレノールは口の端を上げて、頷いた。
そしてキリッと秋男達を見た。
「食い止めて見せます。もしもの時は………ローズさん、秋風をよろしく頼みます」
言いながら、フレノールは長い髪をひとつに束ねた。
ローズは秋風の肩を抱きしめ、頷いた。
フレノールはビークの元へ駆け寄った。
「兄貴、大丈夫!?」
「あぁ。でも俺の魔術が全く通用しなくて」
「また、増えたのか。増えても意味がないと言うのに。よっぽどカレナが大事らしいなっ!」
ビークは片手を突き出した。
その指から凄まじい冷気が噴出してくる。
「うわぁ!痛っ、痛ってぇ〜!」
プレーノとフレノールは冷気を浴び、体が凍りそうになった。
「それだけ?」
しかし、彼女の口から出た言葉は挑発的なものだった。
「フレノール、何言ってんだよ?逃げた方がいいぞ」
「そいつの言う通りだ」
「逃げるのはあなたの方よ!」
今までの彼女から想像出来ない気迫………。
ビークは無意識に体を強張らせた。
フレノールはプレーノに、ニッコリと笑う。
「兄貴、今からちょっと変わるけど、びっくりしないでね」
そう言うと、フレノールは両腕を前に突き出した。
左手には拳を作り、その拳の下へ右手の平をそっと添える。
何やら呪文を念じると、フレノールの体が宙に浮いた。
「何だ!?」
体から白銀の光があふれ出す。
彼女の両腕は体の前でゆっくりと左右に開かれ、手が動くと同時に杖が現れた。
杖を中心にくるっと一回転すると、彼女の背中に羽が現れた。
「まさか!!」
ビークの体は金縛りに合ったように動かない。
眩いばかりの銀の翼。
彼女の体を包み込むような大きさ。
その翼に、ビークは見覚えがあった。

かつてカレナの城によく出入りしていたヤツ。
パストルと僕を鋭い眼差しで睨んでいた。
秘密基地がばれて、こっ酷く叱られた。

「まさか、お前はファジィ!?」
フレノールは杖を握ると、それを振り下ろした。
風が吹き抜け、それと同時に浜辺の砂が舞った。
「うわっ!!ぺっぺっ」
プレーノの口に砂が入ったようで、海水で口をゆすいでいた。
「先に言えよ!!」
目にも入ったようで、こればかりは海水で洗えない。
涙を流しながらフレノールに苦情をつける。
しかしフレノールには届かず、どこか彼女の面影すら失っている風にも感じた。
声が少し低くなっているような気がする。
元々男勝りだが、それがもっと強調された気もする。
プレーノの背中がゾクっとした。
“妹じゃない!?”
「飛べるんでしょ?」
フレノール、いや、ファジィが、また挑発する。
「お前と空中遊泳を楽しむ気は無い」
ビークはキョロキョロと辺りを見渡した。
「あそこか!」
まっすぐ秋風のいる方向へ走っていく。
「逃がさないわよ!」
ファジィはビークの前に回りこんだ。
「スピードで敵う相手だっけ?」
そう言ってビークに向かって微笑みかけた。
ファジィは風を司る、天界の王。
風を自由とする空中では敵いっこない。
分かっているが、今は挑発に乗るしかない様だ。
「くそったれ!」
ビークは宙に浮いた。
「そうこなくっちゃ」
剣でファジィを捕らえようとする。
しかしファジィは杖を軸にして、フワフワと飛び回るばかり。
「もうカレナを見つけ出したとはな」
剣を振るう。
「カレナには指一本触れさせないわよ」
しかし飛び回り、剣は思うように当たらなかった。
「くそっ!どこまでも邪魔なヤツ!」
「お互い様ね」
ファジィの杖さばきは見事なものだった。
ビークの攻撃は殆ど通用しなかった。
しかし、実はフレノール自身、自分にどんな力があるのか、まだ知らなかった。
あのペンダントで前世の記憶を思い出した時に、ビークにとってファジィが天敵だという事を思い出しただけだった。
つまり、フレノールのこの行動は、ハッタリである。
ファジィという姿でビークをどこまで押さえ込めるか。
本当は彼女自身も分からなかった。

「ちっ、埒が明かねぇ!!」
ビークは地上を見渡した。
カレナと思われる、あの女までの距離は僅かに遠い。
ファジィが邪魔になって今の様子も分からない。
何か盾になるものを………。
ん!?
ビークはプレーノの姿を捉えた。
「あれだ!」
ファジィの体に剣を振る。
案の定、杖を使ってひらりとかわした、その瞬間を狙い、プレーノへと向かった。
「わわっ、こっちへ来る!?」
「兄貴!」
「貰った!!」
ビークはプレーノの杖を掴んだ。
「これでも食らえ!!」
杖を使い、より強力な冷気を発した。
プレーノがビークに直撃させたあの時の氷の玉を、いとも簡単に出して見せたのだ。
しかし、プレーノのそれとは比べ物にならない威力のものだ。
「しまった!!」
ファジィの羽は見事にそれを受け、凍ったところをビークの剣によって貫かれた。
「フレノール!!」
秋風が叫んだ。
ファジィの体はバランスを崩し、その体は砂煙を巻いて、浜辺へ堕ちた・・・・・・・・・。


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