SOLVE A RIDDLE〜双子の勇者たち〜

+プレーノ+

秋男達は、グリーンタウンという島に向かっていた。
秋男達にとってどういう場所なのか、それはまだ分からなかった。
ただ、この島へ訪れる必要があるとフレノールは予言したのだ。
だが、島に着くまで約四日かかるらしい。

「まだ着かないのかよ?」
プレーノが退屈な船旅に飽き、うろうろし始めた。
城を出てからまだ二日しかたっていなかった。
「兄貴、格好悪いわよ、なんだか子供みたい」
フレノールの言葉に、秋風がクスクスと笑った。
「マリネも来たかったでしょうね」
フレノールは秋風に話しかけた。
「そうね、でもびっくりしたわ!マリネってお姫様だったのね!」
秋風は旅立ちの時に振り返り、城を見て仰天したのだった。

「ええっ!?マリネさんの家って、お城だったんですか?」
「え?言いませんでした?ここはジオラマ城です、って」
「あ、そう言えば聞きました」
「ね、秋風さん、私にも普通に話して欲しいです」
「普通って?」
「マリネの家ってお城だったのねーって感じに」
マリネが少しほほを赤らめ、俯いた。
「あははは、マリネってば、面白ーい!」
「そう、そんな感じで!」
「じゃぁ、私にもそんな感じで!」
「うん!」
二人ではしゃいで笑った。
秋風には、こんな風に笑える友達は他に居なかった。
「出発するみたいだぞ!」
秋男が二人を呼びに来たが、マリネは船に乗らなかった。
「マリネ、どうして?」
「私は、まだ一緒に行けないの。その代わり、私より強い戦士を一人紹介しておくから」
秋風はとても残念そうにマリネを見つめた。
「そんな顔しちゃって!直ぐに合流するわ。だって、今、母が留守なの。それだけだから」
秋風はそう聞いて、ホッと胸を撫で下ろした。
「分かった待ってる。じゃぁね!」

秋風は思い出してクスリと笑った。
「何?楽しい事あった?」
ふと隣に座っていた若い男が秋風を見た。
名はグロール。
淡い栗色の髪を長くして、後ろに束ねていた。
秋男達と同じ十七歳で、ジオラマ城の兵士の一人だ。
「あ、ううん」
秋風は見つめられて少し赤くなる。
ちょっと格好いいな………。
「あの、私達のために、どうもありがとう」
グロールはふんと顔をそらした。
何?今の………
と、その時、突然船体が大きく揺れた。
「うわぁ!」
プレーノがバランスを崩して転んだ。
「下がってろ!」
グロールはそう言って剣を抜いた。
「何なの?」
秋風の質問は、大きな波の音にかき消される。
波が船の高さまで上がり、中から巨大なエイが飛び出した。
グロールがエイを真っ二つに切り裂くが、次々と出て来る。
全部で五匹、やや押され気味だ。
「魔物か!」
プレーノが叫び、フレノールは碇を下ろした。
突然群れの中の1匹が秋風の前に飛び出してきた。
「きゃぁ!」
秋風がすくみ上がっていると、彼女の前を氷の矢が通り過ぎ、魔物の体を貫いた。
大きな体が船体を滑った。
「シッポは猛毒だぞ!」
「え?ええーー?」
気づくと、プレーノが秋風を守るように立っていた。
「立てるか?秋風!」
プレーノと同時に現れたフレノールが秋風の腕を支えた。
「こっちへ!」
フレノールに連れられ、中へ隠れる。
「あの、私、何をすれば………」
フレノールは秋風を落ち着かせるように、ゆっくり言い聞かせた。
「今、秋風に出来る事は自分の身を守る事よ」
「でも、それじゃぁ………」
「いいえ、足手まといなんかじゃないわ。無理をして怪我をする方がよっぽど足手まといなのよ」
魔物は次々とグロールの手によって葬り去られた。

魔物の群れが消え、グロールはむすっとしたまま、秋男の前に立った。
「剣を取れ」
秋男の足元に剣を滑らせる。
「あ、あの………」
「何のつもりだ?」
「やめて!お兄ちゃんは、まだ一度も戦った事ないのよ!」
秋風が割ってはいる。
「命を狙われているのは、お前だ」
グロールは秋風を見ず、剣先を秋男に向けた。
「わ、分かってるよ、だけど、何をしたらいいか、全く分からなかったんだ」
「それでもグロルフの息子かよ、腰を抜かして動けないだと?秋風の方がよっぽどしっかりしてるね」
グロールは鼻で笑い、剣を片付け、その場を去った。
「何よ、誰だって初めての経験は怖いものよ!」
秋風は、聞いてはいないグロールの背中に言葉を投げ、秋男に肩を貸した。
「お兄ちゃん、立てる?ちょっと休もう」
秋風は秋男をなだめて、部屋へ入った。

「秋男くんには、まだ早かったのかもね」
フレノールがプレーノとグロールにコーヒーを出す。
「いや、そうじゃない。まぁ、女には一生分からないさ」
プレーノはそう言うと、グロールに「な?」と視線を投げた。
「何よ、それ」
フレノールは、面白くないといった顔で、グロールのカップにコーヒーを注ぐ。
グロールはちらっとそれを見て、差し出されたコーヒーを黙って飲んだ。
「その内分かるさ」
グロールはそれだけ言うと、部屋から出て行った。

出た先に待っていたのは、秋男だった。
グロールは薄く笑うが、直ぐにポーカーフェイスに戻った。
「さっきは悪かった」
秋男は前を通り過ぎるグロールに必死に話しかける。
「本当に戦った事なんてなかった。でも、何かしなきゃって思えば思うほど、体が金縛りのように固まってしまったんだ」
秋男は、カラカラに乾いて、もつれた舌を動かす。
グロールは何も言わない。
「確かにグロールの言う通りだった。僕はそれを言い訳にして、戦わなかったんだ」
「それで?」
グロールに促され、秋男は少し嬉しくなった。
「だから、剣を習いたい」
「お前にはまだ無理だ」
「だけど、さっき、教えようとしてくれたじゃないか!」
「気が変わった」
「うそだろ?教えてくれよ!頼む!お願いします!!」
秋男はそう言って頭を下げた。
「やめとけ、護る側に向かって」
グロールはクスリと笑い、剣を鞘ごと体から外した。
「秋男、この剣が持てるか?」
グロールに手渡されたその剣は、ずっしりと重かった。
「う、うん、何とか」
「抜いてみろ」
「………」
秋男は言われるがまま抜こうとしたが、剣は抜けなかった。
「やっぱりな」
グロールは秋男から剣を奪い、あっさりと鞘から抜いた。
「あ………」
「な?無理だろ?だから、まずは体力づくりから」
二人は顔を見合わせて笑った。


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