SOLVE・A・RIDDLE〜双子の勇者たち〜

+フレノール+

「来る!」
一人の女が突然叫ぶ。
「いよいよか………」
お茶を楽しんでいた二人は、窓に視線を投げる。
「準備しなくちゃ………」
「え、お茶は?」
「兄貴は別に来なくてもいいのよ」
妹に言われ、兄は押し黙る。
「俺は、その、お前の言う世界を救う神様を見たいんだけど」
「見たいだけなら誰だって見られるわ」
妹はローブを着込み、身を守る装飾品を装備する。
「いや、俺も行く。足手まといにならない様に頑張るからさ」
兄はおどけてみせ、妹の手を取った。
「兄貴………」
妹は微笑み、声にならない言葉でささやいた。
“ありがとう”
二人の兄妹は、身支度を済ませ、ある大きな城へと向かった。

+++

「ここは………?」
秋風が目を開ける。
暖かな寝具に身を包まれていた。
「ここは、ジオラマ城」
枕元で女の声が聞こえる。
「良かった。気がついたのですね」
「あの………」
秋風が体を起こそうとすると、女が背中を押し、起き上がるのを手伝ってくれた。
「あ、お兄ちゃん!」
「大丈夫。ここに居るわ」
もうひとつのベッドに、秋男が眠らされていた。
「秋風、無事か?」
秋男も目覚めたらしい。
「良かった………」
秋風はほっと胸を撫で下ろし、そばで看病している女性を見つめた。
栗色の柔らかそうな髪。ショートヘアー。
その髪と同じ色の瞳をしている。
胸元に編み込みのある服を着ている。
下はミニパンツ。
すらりと伸びた腕と足はとても白く、きちんと揃えられて、気品を感じた。
年は、秋男達と同じくらい。
まだ若そうだ。
「私の名前はマリネ。そして、秋男さんと秋風さんですね?お待ちしていました」
「どうして、僕たちの名前を?」
秋男はびっくりして飛び起きた。
「ってぇ〜………」
「あ、無理なさらないで」
マリネが秋男の体を支えた時、ノックの音がした。
「あ、その前に、紹介したい人がいるの」
マリネは立ち上がり、扉を開ける。
扉の向こうには若い男女がいた。
「フレノールです」
女がふかぶかと頭を下げ、秋男に向かって歩いてきた。
白いローブを頭からかぶった彼女は、秋男の体に手をかざし、何やら呪文を唱えた。
「あ、体が軽くなった?」
秋男は信じられないという顔で、フレノールを見つめた。
「癒しの呪文です」
フレノールは、秋風の体にも同じように呪文をかけた。
「火傷の跡が………消えた」
「女ですものね」
秋風が治った傷に感激していると、フレノールはにっこりと笑った。
「動けますか?」
マリネが二人に訊ね、大きな広間に案内した。

  大きなテーブルの一角にある、大きな椅子にそれぞれが腰をかけ、自己紹介が始まった。
「改めて紹介します。私はマリーネント・オリアン。マリネと呼んでください」
マリネは秋男と秋風にそういうと続けた。
「こちらはフレノールさん、癒しの呪文が専門の魔法使いさん。でも、僧侶とはまた違います」
「フレノール・フーテルです。フレノールと呼んでください。私は予言師の下で修行を積んできました。
ですが、成すべき事が私を呼んだのです。詳しい事は後でお話しましょう」
「こちらはプレーノさん」
フレノールと一緒に部屋に入ってきた男だった。
色が白くて、軟弱に見える。
「プレーノ・フーテル。フレノールの兄だ!魔法をちょっとやってる。妹の助けになれば、と思ってついて来た」
プレーノは愛想笑いをしたが、二人はきょとんとしたまま無表情だった。
「あ、因みに俺は二十歳、妹は十九歳なっ」
軟弱そうだが、話し方はそうでもないようだ。
「あ、私は十六歳です」
マリネがあわてて付け足した。
「何が起こったのか、全く分からない様子ね」
フレノールが秋男を見つめた。
すると、秋男は興奮した様子で、話し始めた。
「僕達は平和に暮らしていたんだ。なのに突然村が襲われて、姉さんが」
「姉さん?」
「あ、コルネっていう、賢者のお姉さんです。私達二人を育ててくれました」
マリネに問われ、秋風が代わりに答えた。
「その、姉さんが、俺が狙われているって言って、でも、私なら大丈夫だからって、僕達を残して、代わりに戦いに………」
「秋男くんが狙われているのは本当よ。私達は、秋男くんを守るために集結したのだから」
「何だって!?」
フレノールが、静かに語り始めた。

「この世は、四つの世界で成り立っていたの。妖精界、魔界、天界、そしてここ、地界。四つの世界にはそれぞれの神様が住んでいたわ。
でも、およそ百年前に、この世界のバランスが失われたの」
途中で給仕からお茶が出された。
「フレバリーティーです。南国のフルーツやフラワーをブレンドしてあります」
「ハイフラワーね」
フレノールが香りを楽しみ、一口飲んだ。
秋男も秋風も同じように真似てみた。
甘い香りが二人の体を癒した。
「世界のバランスが失われたって、どういう事ですか?」
秋男は落ち着いたのか、柔らかな口調に戻っていた。
「戦争を意味するわ。そして、その戦争は、神の世界では現在もなお続いているのよ」
フレノールが静かに答える。
「戦争が現在も?」
そんな風には見えなかった。
さっきまでは穏やかな暮らしをしていたのだから。
それは、神の世界だから。
しかし神の世界って一体?双子には想像もつかない。
双子達が不思議そうにしていると、今度はマリネが口を開いた。
「かつて、ロゼー・グロルフという英雄がいました。グロルフは、とても正義感が強く、地界の神の右腕と言われた戦士でした。
グロルフには、共に戦う仲間が居ました。剣士オリアンと、魔法使いフーテル」
「え?あれ?確かマリネさん達は………」
「フーテルは俺達の親父だ」
「そう。オリアンは私の父です」
マリネも続けて返事をする。
「じゃぁ、あとはグロルフさんって人の子供を捜すのね?」
秋風の言葉に、フレノールはやさしく微笑み、こう続けた。
「グロルフは、あなた達の父親ですよ」
「ええっ!?」
「じゃぁ、僕達は、父さん達の敵討ちのために集まったの?」
「違うわよ、お兄ちゃんが狙われているって言ってたじゃない?………まさか、狙われている理由はグロルフの子供だからとか?」
「だからそれだったら秋風だって狙われるだろ?」
秋男も秋風も少し興奮したようだった。
「どちらも合っているようで………全然違うわ」
フレノールが首を横に振る。
「フレノール、何か知っているのね?」
マリネに訊ねられ、フレノールは頷いた。
「でも、まだ言えない」
「どうしてさ?ここまで来たんだ。秋男くんや秋風ちゃんだって知らない事だらけなんだぜ?言っちまえよ」
「まだ言えない訳は、全てを語るより、行動した方が早いって事よ」
フレノールはそう言って、マリネを見た。
「船ならあるわよ。他に欲しいものは?」
目が合ったマリネは微笑み、尋ねる。
「腕の立つ戦士を」


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