SOLVE A RIDDLE〜双子の勇者たち〜

+フレノール+


「それにしても、俺を書庫に置くなんて、秋男はリーダー失格だな」
プレーノは呟きながら資料を調べている。
秋男がローズに調べて欲しいと渡したメモの内容を、残された四人で調べていた。
「秋男さんは、本当は戦いたくないのですよ」
サンクスは調べ物の手を休めた。
「戦いたくないってどういう事?」
プレーノも調べていた手を止めた。
「プレーノさんも充分お分かりでしょう?秋男さんが戦いたくない理由は」
「ビークが友達だったから?コルネさんの弟だったから?」
「そうです」
「でも、あいつ、差し違えてでもって」
「場合によっては、ですよ」
「場合ねぇ………でもよ?ヤツとの戦いを、回避する方法は、いくらでもあるんじゃないの?」
「ありますよ。でも、それは出来ない」
「どうして?」
「ビークとの決戦は、秋男さんにとっても、グロールさんにとっても、自分との戦いだからです」
「つまり、ビークに勝てなきゃ意味が無いってか?」
「その通りです。前世の呪縛から解き放たれる儀式です」
「はぁ?そんなお堅いものか?秋男はカレナのカの字も見せないくらい現在の秋男だ。グロールはカレナが見つかってからにっこにこだぜ?それって、前世に囚われなくなった証拠なんじゃないの?」
「いいえ、逆ですよ」
フレノールが興味ありげに近づいてきた。
サンクスは、二人の顔を見て、話を続けた。

+++


「あ、あれを見て下さい!」
マリネが前方を差す。
「あれが………ローズが言ってた島?」
「島って言うより大陸だな、ありゃ」
島というのは名ばかりで、殆ど大陸と行って良い程の大きさの島が二つあった。
空からは二つが綺麗に並んでいるように見える。
「ローズが言ってたのは北の島か。マリネ、南側の島で着地出来そうな所を探してくれる?」
「はい」
マリネは島を一周するように気球を旋回させようとした。
島に近づく度に、空気が重くなる………。
「成る程、バリアの張られた島ね」
グロールが身を乗り出す。
誰もが、空気が変わったと感じ、何も言えなくなっていた。
「北の島でも、あそこなら大丈夫かも」
秋男が島の一部を差す。
半島になっていて、そこなら安全そうだ。
マリネは言われた通りの場所に着地させた。
秋男が先頭に立つ。
秋風を下ろし、グロールはマリネを手伝った。
全員が降りると、グロールと秋男は先頭に立ち、なるべくよく見えるように近づいた。
「何、これ………!?」
後ろについた秋風が呟く。
ドーム型をした紫色の空気が見渡す限りを覆っていた。
この世界にこんなものが出来ていたなんて………!!
グロールは、吸い込まれるように、ふらふらと近づき、剣を抜いた。
バリアに向かって剣を振り下ろす。
「んぐぅ………!」
凄まじい衝撃波により、グロールの体は飛ばされそうになった。
膝を着いたグロールは、そのままがっくりと項垂れる。
「俺の事も拒むのか………」
秋男も同じように腰を落とし、彼の背中に手をやった。
二人でゆっくりと立ち上がるが、グロールは剣で体を支えている。
ふと、秋男の背中に手を回し、肩を掴んだ。立っているのがやっとだ。
「ビークの………気配が、するんだ………」
絞り出すように言い、秋男の肩を強く掴んだ。
秋男はその痛みを受け止める。

秋風は後ろからそれを眺め、何かを感じた。
カレナ探しの時からずっと知っていた。
パストルの心の中には戒めがある。
それが何か今、分かった気がする。
パストルは、カレナの事だけじゃなく、ビークの事も同じくらい大切なんだ………。
いつの間にか秋風の頬が濡れていた。
今、なんとなく分かった。
パストルは苦しんでる。
カレナとビークを助けられなかった事、そしてその二人を戦わせるような事になってしまった事に。
パストルは二人の保護者代わりだったから………。
お兄ちゃんは分かってたんだ。
カレナとしてビークと戦うと、きっとパストルは悲しむだろう。
それを察してるから、覚醒したカレナの素振りを一度も見せたりしないのだ。
「お兄ちゃん………ごめん、直ぐに分からなくてごめんね。カレナは関係なかったんだ」
お兄ちゃんは、カレナじゃない。
だから、ビークと戦う意味は無い。
「本当は戦いたくないんだよね?決戦で足を引っ張るってそういう意味だったんだよね?」
秋風の言葉に二人は振り返った。
問いかける秋風に秋男は答えることなく微笑み、彼女の肩を抱いた。
「さぁ、帰ろう」

+++

「つまり、秋男は、グロールに気を使ってるって事?それをグロールは知っていて、秋男を戦わせるってのか?グロールの奴、どうしてやめさせないんだよ?」
「秋男さんは、秋男さんであって、カレナでは無いからです」
「カレナでは無い?」
「はい。秋男さんがカレナの意志を継いでビークをどうこうしたいと言うなら、彼も止めたかも知れません。しかし秋男さんは、カレナとしてでは無く、秋男さんの意志でビークと戦いたいと思った。そればかりは、グロールさんにも口出し出来ないのですよ」
「………あいつらがそんなに辛い思いをしてるなんて、想像も付かなかった………」
秋男は、グロールの気持ちを分かってる上で戦うから、グロールはそれに水を差せないんだ。
“じゃぁ、てめーは分かるのかよ?秋男の気持ちが!!”
「っくそ!」
プレーノは机を乱暴に叩いた。
てめーだって人の事言えねぇーっつーの!ハッタリ野郎。
「何でもかんでも一人で話を進めやがって………グロールの奴!」
「秋男君とグロール………。お互い支え合ってるって言うより、もたれ掛かってるって感じね」
「………そうだな」
もたれ掛かっていては、身動きが取れない。
どちらかが動こうとすると、片方が倒れてしまう。
なんとしてもビークと秋男の戦いを回避させるべきだ。
秋男は助けを求めている訳ではないが、絶対助ける!!
「第一、そんな気持ちで戦えっこないだろ」
プレーノは思わず呟いた。
「ねぇ、皆さん………」
ずっと黙々と調べ物をしていたローズが、三人に呼びかけた。
サンクスは慌てて姿勢を正す。
「は、はい、騒がしくして申し訳ありません」
「そうじゃないの。こちらに来て、一緒にご覧になって下さらないかしら?」
「はい?」
「何か見つかったのか?」
プレーノがガタッと椅子から立ち上がった。
「ルベリア石………」
ローズがそれだけを呟いた。
「それって確かマリネさんが持っていらっしゃいましたね………」
「そうです。秋男さんが調べて欲しいと仰った項目では無いのですが、ルベリア石について、少々気になる事が書かれてあるものですから」
ローズがそう言うと、三人は彼女の元へ集まった。


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