WE LOVE DRAGON QUEST

 
この物語は、鷹哉さんと和歌奈の卒業式での出来事が絡んだお話です。
「和歌奈的事情」により、「林君」とのその後を綴ってみました。
この二人は、素直じゃないから、本当に世話が焼けますね。
みていてイライラしちゃいます!!

                                  By カナエ



「何だよ、これ」
「う、うん」
卒業式。
体育館の裏で、卒業生であろう男女のカップルが一組、向かい合っていた。
男子は林鷹哉。クラスでボスザルと恐れられている。彼は腕を組み、太い樹に上半身を預け、すらりと長い足を投げ出している。
女子は霧島和歌奈。よそのクラスの女子が書いた鷹哉へのラブレターを渡そうと、ここへ呼び出した張本人。
鷹哉に睨まれ、和歌奈は口ごもる。
「えっと・・・」
他人のラブレター渡しなんて、もう何度もしてきた事なのに。
「お前、今日は何の日か知ってるか?卒業式だぞ!?」
「分かってる。・・・から、今しか無いじゃない!」
「それはそっちの都合だろ!!」
「今日しかないのよ?最後なのよ?」
「こっちだって最後なんだよ!俺の卒業式は今日しかないんだぞ!!」
鷹哉は、和歌奈の手からピンク色の封筒を奪い取った。
「あっ!」
そして、ビリビリと音を立てて破った。
「林君!」
「霧島、こんな事するなよ!他人の事なんて放っておけよ!」
鷹哉が和歌奈の腕を掴んだ。
「痛っ!」
和歌奈は小さく悲鳴を上げ、腕を振り払った。
「何よ!林君はいつも私に指図して!林君は女心が分かってないのよ!私が何をしようと勝手でしょ!」
「あぁ、勝手だよ」
「!!・・・へぇ・・・」
和歌奈の声が震えた。
「私にだって卒業式は今日しかないんだよ?自分ばっか迷惑かかったような顔しないでよ!」
「はぁ?俺は何も言ってないだろ。自分で好きなようにすいればいいだろ。・・・だったら、俺なんかと居ないで、どっか行けばいいだろ!」
「それもそうね!!林君と一秒でも長くいたら、息が詰まっちゃう」
「詰まれよ勝手に!どっか行けよ!もういいよ!早く誰かと消えてくれ!!」
「・・・ふーん、あ、そうよね。私が・・・誰と何してようと関係ないわよね。失礼しました!!」
和歌奈はそう言って去っていった。
「・・・っくしょう!!」
鷹哉は拳で樹木を殴った。さわさわと音がして、花びらや葉っぱが舞った。

時は流れて夏休みも終わりかけ。
鷹哉と和歌奈はドラクエの世界を通じて仲を取り戻し、今日はいつものベンチに座っていた。
「何だよ、話しって」
鷹哉の愛想のない声に、和歌奈の胸は苦しくなる。ドラクエの世界でカナエに言われた。今しか言えないこと、たった一言足りなかっただけで、すれ違ってしまうこと。
「私達、まだ何も進んでない」
「はぁ?」
「卒業式の時からよ。ずっと、ドラクエの世界にいた時も・・・松坂君と林君は仲直りしたけど、私達はまだなんじゃないかって思ったから。・・・卒業式の事、ごめん」
「売り言葉に買い言葉。もういいよ。俺も悪かった」
「仲直りしたいんだけど」
「そんな改まって修復しないといけないような仲でもないと思うけどな」
「・・・怒ってるんだね」
「怒ってねぇよ」
「カナエの事、好きだもんね?」
「はぁ?何でそんな・・・」
「見てて直ぐに分かったよ。カナエにはもの凄く気を使ってたこと」
「それは・・・」
「どうして振ったの?住む世界が違うから?」
「そんな事聞くために呼んだ?だったら帰る」
「ごめん。・・・でも、知りたい」
「霧島に関係ないだろ?」
「関係ある!お願い答えて。カナエのこと、どう思ってるのか・・・」
「また他人の橋渡しかよ。いい加減その性格やめろよ!」
「・・・」
和歌奈は押し黙った。
「・・・カナエとは何もなかった。俺は、カナエには優しく出来なかったんだよ」
「優しかったじゃない!ちゃんと、振ってあげることが・・・出来たじゃない。・・・だから私のことも・・・」
「・・・?」
「私のことも、ちゃんと振ってくれる?私、林君に迷惑一杯かけてきたし・・・分かってる。だから、嫌われて当然だし。でも、仕方ないよね。好きになっちゃったもんは・・・」
和歌奈の声が震えて、声の違いに自覚があるのか、最後は苦笑いをした。
「え?」
鷹哉の周りの空気は一瞬止まった。今、なんて・・・?
「いい、あ、やっぱり、何も言わないで。怖い・・・から」
和歌奈がそっぽを向く。それ以上、何も言ってくれなくて、暫く沈黙が続いた。
鷹哉は和歌奈の言葉を思い出し、間違えないように繋げてみた。
それって、俺が好きってことで、でも嫌われてるから振ってくれって言ってんの・・・?
「・・・んだよ、それ」
「カナエと私を比べたりしないでね。絶対負けるから。でも、私達はこれからも会うんだし、カナエの時みたいに、ちゃんと・・・」
「訳わかんねー。霧島は俺のことになったら勝手に決めたり、反対したりするんだな」
「そんなこと無いよ?」
「してる。今だって・・・」
鷹哉は口ごもった。
「何で、勝手に振られるとか・・・。いつからだよ?」
「いつって?」
「いつから、その、俺のこと・・・」
「 あ、うん・・・。ゾーマ戦。林君が私を庇ってくれた時から・・・」
あの後和歌奈は、世界樹の葉をすりつぶして、瀕死の鷹哉に飲ませた。口移しだったと思う。だから、それに関しては、知らない振りをしていたかったのに・・・。聞いてしまった以上、知らない振りは出来ない。
「・・・共犯だな、これは」
鷹哉は和歌奈を見た。
和歌奈は相変わらず後ろを向いている。
「で?俺のこと諦めんの?」
「うん・・・忘れていいよ」
「らしくないな?他人には諦めるな!やってみなくちゃ分からないとか言う癖に」
「だって・・・」
「霧島・・・こっち向いて?」
鷹哉は優しく言った。
「・・・」
「噛みついたりしないから」
笑いながら和歌奈の肩を肘で押した。
和歌奈は恐る恐る振り返り、鷹哉を見た。
「俺は五年の時から。お前はゾーマの時から。だから、・・・今更 改まって、修復とか何とか関係ないだろ」
「・・・あ・・・?」
和歌奈の目から涙がこぼれた。
「泣くなよ!!」
鷹哉は和歌奈を指ではじいた。
「痛っ!・・・もう!!林君!」
「お前が泣くなんて、似合わねーんだよ!!」
和歌奈は涙を拭い、いつもの表情に戻った。
「・・・もう!!嫌い!!」
和歌奈は立ち上がり、鷹哉の頭を殴った。
「痛ってーな!!モーモーウシ!!」
鷹哉も立ち上がり、和歌奈のポニーテールを掴んだ
「もう〜〜やめてよ!!」
二人がいつの間にか鬼ごっこを始めた頃、聞き慣れた声がした。
「ごめん!待った?」
「勇気、こいつ何とかしてくれ〜〜!」
「何をしてるの?」
雅之が尋ねる。そう、勇気と雅之が同時に来たのだ。
「こいつが俺を蹴るから!」
「林君が変なこと言うからでしょ!」
そしてまたじゃれ合う二人を見て、雅之は素直に思ったことを言う。
「二人とも、いつもの喧嘩とは違うね。いつからそんなに仲良くなったの?」
「・・・はぁっ!?」
鷹哉の声がうわずった。そして、「霧島はさっき俺のこと嫌いって言ったばっかりなんだぞ」と付け足した。
「そうよ!!あんたなんか大嫌い!」
「俺だって嫌い」
「私なんかこれぐらい嫌い!」
「俺だって、これぐらい嫌い!!」
そんな二人を見て、勇気と雅之は笑った。
「つまり、二人は同じ気持ちだってこと?」
勇気の言葉に、雅之が「それって、両思い!?」と驚いた声で付け足した。
「てめーら、それ以上言うと、ぶっ殺す!!」
「はいはい」
勇気が簡単に返事をすると、鷹哉は「分かってんのか?」と睨んできた。
でも、恐くないや。鷹哉の目は、優しそうだもの。これは何かあったね。
勇気は満足そうに微笑んだ。

「鷹哉、そっちの学校どう?」
「つまんねー。てめーら全員引っ越してきたら?」
「鷹哉が引っ越せよ」
「それいいね!」
「またドラクエの世界に入れたらもっといいね!」
「今度はセブン・・・ってかぁ?」
僕達ははしゃぎながら和歌奈の家に向かった。
勝兄ちゃんにセブンをさせてもらうために。

・・・ WE LOVE DRAGON QUEST ・・・


僕達は永遠に友達で、ずっと一緒にいられると思っていた。
学校が違っても、こうやって会えるのだから。

僕達は、ずっと、友達だよ。
ね?みんな・・・


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